記事詳細

「現金お断りの店」は、その後どうなったのか? ロイヤルHDの実験 (4/5ページ)

 野々村: キャッシュレスにすればペーパーレスもできるのではないか、といった声があって、実際にやってみるとすぐにできました。なぜか。売り上げの伝票はいりませんし、入金帳も不要ですし、報告書もない。店長の机を見ていただけますか?

 土肥: 何もない。店内に紙は1枚もない?

 野々村: いえ、対外的にどうしても必要なモノがあるんですよね。店側が「ペーパーレスだ」と言っても、先方が紙でしか受け付けない場合もあるので、そうした書類については紙を用意しています。

 土肥: 決済手段はどのような感じですか?

 野々村: 時間帯によって違いますね。ランチのときは、クレジットカードと電子マネーが半々といった感じ。電子マネーは少額でも使いやすいことと、かざせばすぐに決済できるので、手軽さがうけているのではないでしょうか。一方、ディナーのときは、クレジットカードを利用する人が7割ほど。夜は金額が高くなる傾向があるので、クレジットカードを利用する人が多いですね。ちなみに、QRコード決済は1割ほど。ポイント還元などキャンペーンを行っているときは、利用者が増える傾向がありますね。

■キャッシュレス店の課題

 土肥: キャッシュレスにしたら報告業務などから解放された。ペーパーレスにすることもできた。いいことばかりのように感じますが、課題も出てきたのではないでしょうか?

 野々村: 仕事内容は劇的に変わりました。ただ、お客さんがそのことを理解するのは、まだまだ時間がかかるでしょう。

 土肥: どういう意味でしょうか?

 野々村: 客数は徐々に増えているのですが、現金を使えるようにしたら売り上げは倍になるかもしれません。ただ、それでもキャッシュレスの方針は変えません。

 土肥: それはなぜですか? 1年間運営してみて、現金でも決済できるようになれば、「売り上げは伸びる」と判断したんですよね。であれば、方針を変更してもいいのでは?

 野々村: 先ほども申し上げたように、この店はキャッシュレスのためだけにオープンしたのではなくて、どのようにすれば生産性を向上できるのか、どのようにすれば働き方を改革できるのか、といったことを継続して取り組まなければいけません。「現金でもOKですよ」といった形になると、生産性を高める取り組みが終わってしまうので。

 土肥: ロイヤルHDではさまざまな外食チェーンを展開していますよね。その代表格ともいえる「ロイヤルホスト」で、現金お断り店をつくる予定はありますか?

 野々村: ないですね(きっぱり)。キャッシュレスにすると、間違いなく売り上げが下がります。2割ほど落ち込むのではないでしょうか。なぜかというと、ロイホの8割は現金で決済されているから。ランチの時間、複数で来られたお客さんは割り勘で清算するケースが目立つのですが、その際クレジットカードを使えば時間がかかってしまう。一方、現金の場合は速い。「1人、1080円ずつです」「はい、お釣りは20円です」といった感じで。

 「QRコードで決済すれば速く終わるじゃないか」という指摘があるかもしれませんが、利用する際にまだまだ不慣れな人が多い。あと、事業者が多いので、お客さんも迷われるんですよね。「いま、どこの会社のモノを使えばいいのか」といった具合に。こうした課題が解決されれば、利用者はもっともっと増えるのではないでしょうか。

 繰り返しになりますが、ロイホでキャッシュレスを導入する予定はありません。お客さんの8割が現金を使っている状況で、「現金お断り」を掲げることはできません。

ITmedia ビジネスオンライン

関連ニュース