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三菱商事太陽、在宅SEの養成から採用までを実施 テレワークで就労機会を提供 「IT+障がい者雇用」で独自の取り組み

 社会福祉法人「太陽の家」と三菱商事の共同出資会社である三菱商事太陽(大分県別府市)が、「令和2年度 テレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰(輝くテレワーク賞)」の特別奨励賞を受賞した。IT企業である同社が、障がいのあるSE(システムエンジニア)の在宅ワーカー採用を始めたのは2018年。「IT」と「障がい者雇用」のプロだからこそ成し得たその独自の取り組みが高く評価された。

若手障がい者の採用問題が深刻化

 厚生労働省が毎年実施している「輝くテレワーク賞」は、テレワークの活用により労働者のワーク・ライフ・バランスの実現に顕著な成果をあげた企業・団体や個人に授与される。6回目となる今年度は、「優秀賞」1社と「特別奨励賞」4社が選ばれた。このうち「特別奨励賞」は、テレワークの導入に当たりさまざまな工夫を凝らすなど、他の企業・団体の模範となる取り組みを行っている企業・団体が対象で、三菱商事太陽もこれに選ばれた。

ビデオ通話などを活用し、在宅勤務者と常時コミュニケーションをとっている ビデオ通話などを活用し、在宅勤務者と常時コミュニケーションをとっている

 同社の設立は1983年。整形外科医で“日本のパラスポーツの父”といわれる故・中村裕(ゆたか)博士が、障がい者には「保護より働く機会を」という考えのもと1965年に創設した社会福祉法人「太陽の家」の理念に賛同し、三菱商事が、共同で立ち上げた特例子会社だ。

 同社の主な業務は、三菱商事の人事系システムやグループウェアのアプリケーション開発・維持管理など。その分野ではグループ企業随一のノウハウを持ち、大型開発案件に次々と着手することで実績を上げている。早い時期からデータ入力業務などにおいて在宅ワーカーの採用も行っているが、近年、SEの高齢化や顧客が求める開発技術の高度化、大型案件獲得による要員不足、納期順守のための長時間労働などが進み、さらには少子化によって特に地方における若手の障がい者採用が困難になるなどの問題が深刻化してきた。

 そこで、即戦力となる障がい者SEの採用機会を広げたいと、2018年に在宅SE養成コースを導入。システム等の開発パートナーを務めるエヌ・ティ・ティ・データ・イントラマートと連携し、同社の提供するe-learning教材および、三菱商事太陽の実務課題を修了した人を雇用につなげることとした。

 受講要件は、障がい者手帳を持っていること、自宅にPCおよびインターネット環境があること、週20時間以上働けることに加え、HTMLの記述ができる、JavaScriptでプログラミング開発ができる、SQLの基本事項を理解している、Webシステムの開発ができるなど。就労準備性の高さはもちろん、すでに保有しているスキルも重視される。

事業開始から2年 プロセスに成果

 在宅SE養成の流れは次の通りだ。まず、受講希望者の書類審査を行い、パスした人にはe-learning教材が無償提供される。その後、教材内容の理解度テストが行われ、修了者のみ実務課題を受講。さらに三菱商事太陽の就労支援担当部署が自宅訪問や支援環境の調査を行い、問題なければオンライン面接、採用へと進む。受講期間は教材履修と実技実習を併せて約4カ月。2018年から現在にいたるまで3期に分けて研修が実施されており、合計28人が履修し、内13人が在宅SEとして採用された。事業開始から2年、こうした在宅ワーカーの新たな採用プロセスが成果を上げてきたことが、今回の「特別奨励賞」受賞につながった。

チャットやビデオ通話を最大限に活用 細かいところもできるだけ心を配る

 同社で勤務する在宅SEのA氏は、「製造工場の商品開発業務で体調を崩しシステム会社に転職したが、就労環境を用意するのが難しいと試用期間中に雇用打ち切りとなった」という経験を経て本講座を受講した。現在は開発チームの一員として活躍している。

 「地方における障がい者雇用は非常に選択肢が狭く、特例子会社や障がい者雇用の枠自体もほとんどないのが実情です。あっても、体調を崩しにくいよう定型化された業務内容が中心です。そうした中、希望の職種であるSEとして、しかも病状がコントロールしやすい自宅で仕事の経験が積めることに魅力を感じ、受講を決めました」とA氏。「実際に在宅で業務のサイクルを回す経験ができ、それが今の自信につながっています」という。

 多くの在宅勤務者が初めに戸惑うのが会社とのコミュニケーションと言われるが、同社では双方が常時チャットやビデオ通話でつながっており、リモートでの交流会も行われる。在宅勤務者の所属長によると「チャットはメールに比べてフランクな会話を生みやすく、ビデオ通話はPC画面の共有も可能です。特に週一度のチーム会では、社内に居るチームメンバー全員が見渡せるようタブレットを配置し、コミュニケーションを図っています」

就労支援専門チームが在宅勤務者の障がい特性に合わせた就労環境づくりをサポートしている 就労支援専門チームが在宅勤務者の障がい特性に合わせた就労環境づくりをサポートしている

 環境の整備は就労時以外の場面にも及ぶ。「テレワークのメリットはよくワーク・ライフ・バランスの実現にあるといわれますが、当社の場合、あくまでも障がいのある方にとってのメリットを最大限に出すことが大事です。そのため、障がい特性に特化した働く環境の環境整備や運動不足への対応、労災・防災・セキュリティ対策の整備など、細かいところにもできるだけ心を配るようにしています」(同社ジョブコーチ)。

 三菱商事太陽の就労支援担当部署には、こうしたジョブコーチのほか、経験豊富な精神保健福祉士等で構成された就労支援専門チームがあり、養成講座の実務課題はクリアできても、同社が採用の前提とする就労準備性が備わっていない採用候補生を様々な面からサポートする体制も整っている。WITHコロナの時代となり、さらにテレワークの活用が進んで行く中、同社の取り組みは重要な指針の1つになるのではないだろうか。

提供 三菱商事株式会社