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【中本裕己 エンタなう】NYの青年が飲んだくれ中年男から学んだこと 映画「さよなら、僕のマンハッタン」 

 平日の夜、客席もまばらな映画館で良い作品に出合うと掘り出し物の満足感に、ニヤリとしてしまう。「さよなら、僕のマンハッタン」(公開中)はそんな1本だ。

 ニューヨークに暮らす平凡な青年の恋愛物語なのだが、良質の短編小説のように変化に乏しい毎日が人々との化学反応によって転がり始める。NYのスノッブさを憎むようでいて心底愛している監督の目線に引き込まれていく。

 青年が一人で暮らすアパートに、謎の飲んだくれ中年男が越してきて、お節介なアドバイスを始める。父親の愛人との出逢いから、日々に妙な刺激が加わる。自分が何者なのか、わからない苦しみは若者の特権だ。女性が眩いばかりに輝いて見えるのも若さの役得である。しかし、忘れかけているが、中高年にさしかかった男女の胸のうちにも実は息づいていることを気づかせてくれる心憎い都会の寓話だ。

 青年役のカラム・ターナーはブレーク間近の英国人俳優。父親役のピアース・ブロスナンが良い味を出している。サイモン&ガーファンクル、ボブ・ディラン、ルー・リードやジャズの名曲を効果的に使えるマーク・ウェブ監督は、1974年生まれ。さすがミュージック・ビデオ出身で、音楽がこの街の重要なピースであることを熟知している。

 監督を映画界に知らしめた「(500)日のサマー」「gifted ギフテッド」といった佳作を知らなくても十分楽しめる。(中本裕己)

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