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【中本裕己 エンタなう】不良おやじと美少女を待ち受ける運命 映画「ビューティフル・デイ」 

 根無し草のような不良おやじと、世を儚んだ美少女がひょんなことから遭遇し、都会の狂気に飲み込まれる。「タクシードライバー」や「レオン」の世界観が好きな人なら映画「ビューティフル・デイ」(公開中)を見逃す手はない。

 元軍人で、殺しも厭(いと)わぬ人捜しのプロとして生計を立てるジョー(ホアキン・フェニックス)。あご髭に緩んだ体、目深に被ったキャップ。得体の知れなさに凄みがある。武器が日曜工具店で手に入るハンマーというのも生々しいが、年老いた母をいたわりながら暮らす一面を持つ。

 そんな彼のもとに、政治家から愛娘のニーナを捜してほしいという依頼が舞い込む。

 「君は残忍だって聞いた」

 「時にはね」

 この乾いた会話以外、映画の前半は、眠たくなるほど寡黙だ。カメラはジョーの目線で、迷宮に入り込んだように少女を追い続ける。しかし、悪の巣窟から命がけで救い出したニーナは、魂が抜けたように無表情だった。そして、依頼主に送り届ける途中に再びさらわれてしまう…。

 ジョーが少年時代に受けたDVや軍人時代のトラウマも映像の随所に挿入され、人間の弱さも炙り出される。「レディオヘッド」のジョニー・グリーンウッドによる歪んだ音楽が不安感を煽る。

 リン・ラムジー監督がニーナ役に抜擢したのは14歳のエカテリーナ・サムソノフ。将来、ジョディー・フォスターやナタリー・ポートマンのように化けるかも楽しみだ。(中本裕己)