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【中本裕己 エンタなう】アメリカの辺境が抱える「闇」を暴くクライムサスペンス 「ウインド・リバー」

 米中西部のワイオミング州というなじみのない土地が映画「ウインド・リバー」(公開中)を見て、強烈に脳裏に焼き付いた。アメリカの辺境が抱える問題を炙り出してきたテイラー・シェリダン監督・脚本による意欲作は、雪深い土地に追いやられたネイティブアメリカンの保留地が舞台。野生生物局の白人ハンターが雪上で若い女性の謎めいた遺体を見つける。民家まで5キロ以上もあり薄着に裸足だった。

 FBIの新米女性捜査官が駆けつけ、女性が暴行されたことも分かるが、酷寒特有の死因や地域が抱える事情に阻まれ捜査は難航。この地に根を張り、野生の勘に長けたハンターに助けを求める。

 物語のほぼ全編は真っ白な雪原。その明るさに反して、女性の失踪が相次ぐという保留地の暗部がえぐられ悲惨さを増してゆく。だが、癒やしようのない悲しみと、どう向き合って生きて行くか、というエンディングには一縷(いちる)の望みがある。

 「西部劇」で描かれたフロンティアスピリットと引き換えに、アメリカが失った正義を取り返すハンター役には、ジェレミー・レナー。カウボーイハット姿が似合い、ガンアクションは胸をすく。内に抱えた悲しい過去を抑えながら、逆境から逃げない孤高のガンマンは「逆・西部劇」として必見だ。当初は4館程度で公開された地味な作品が全米4000館以上に拡大公開され、カンヌで監督賞を得たのも納得だ。(中本裕己)

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