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【中本裕己 エンタなう】音を立てたら即死! 新感覚ホラーの裏に“米の開拓魂” 映画「クワイエット・プレイス」

 いやあ怖かった。映画「クワイエット・プレイス」の舞台は廃墟の近未来。異様な静寂に包まれる中、生き延びた子連れの一家5人が、息をひそめて生活している。言葉は発せず、手話で互いのコミュニケーションをとる。道には砂を敷き詰め、そろりそろりと狂言のように裸足で歩く。生き抜くルールは、ただ一つ「決して音を立ててはいけない」。襲われたら即死の“魔物”に気づかれないためだ。

 「オール・ユー・ニード・イズ・キル」のエミリー・ブラントが主演。夫であるジョン・クラシンスキーが監督・脚本を手がけ、映画でも“夫役”を演じているから妙にリアリティーがある。

 冒頭、一家は街で生活物資を探している。3人の子のうち、幼い末の弟がついイタズラ心を出してしまう。次にとんでもない展開が待っていることが容易に想像できる場面である。楳図かずおの漫画で、「ギャーッ!」という毛の生えた文字の吹き出しとともに、正体不明の恐怖に怯える子供の顔を思い出した。

 聴覚障害を持つ姉役を、自身も同じ障害を持つ「ワンダーストラック」のミリセント・シモンズが演じる。豊かな表情や仕草に家族の不安や葛藤が浮かぶ。そして、家族を守ろうと奮闘する父親の姿は、ホラー映画というより往年のドラマ「大草原の小さな家」でマイケル・ランドンが演じた偉大な父をほうふつ。怖がらせるだけでなく、米国の開拓精神を忘れるな、と呼びかけるような作品でもある。(中本裕己)

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