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【中本裕己 エンタなう】結局は「ただの人」…若者たちの痛みを活写 映画「ここは退屈迎えに来て」

 スポーツができて、頼りがいがあって、ちょっと不良っぽい人気者の男子、というのが中学や高校時代の教室にひとりはいたものだ。たいがい、卒業すると「ただの人」になっている。そこにフォーカスした映画「ここは退屈迎えに来て」(公開中)の心理描写に切ない味わいがあった。

 原作は、富山県出身の山内マリコが2012年に発表して若者の間で話題を呼んだ処女小説。

 「何者かになりたくて」東京暮らしをしていた「私」(橋本愛)が、夢破れて地元に戻ってきた。高校時代に仲の良かった「サツキちゃん」(柳ゆり菜)と一緒に、みんなの憧れの的だった「椎名くん」(成田凌)に会いに行く。映像は、2004年の高校時代と、10年後の今を行ったり来たりしながら、「椎名くん」がどんな風に変わっているのか、興味をかき立てられていく。

 一方、「椎名くん」の元カノだった「アタシ」(門脇麦)は、地元に残って好きでもない男友達とラブホテルで体を重ねているが、「椎名くん」が忘れられないでいる。

 ロードサイドのファミレスや紳士服店などの看板ばかりが目立つ地方都市の息苦しさと、27歳で早くも味わう挫折感。2つが交錯した痛みを廣木隆一監督が丁寧に切り取る。輝きを失った彼ら彼女らが歌をつないで心の叫びをぶつける終盤が印象深い。いろいろあって真面目な定職についた「椎名くん」は、どこか清々しかった。人生とは「退屈」と折り合うことか。 (中本裕己)

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