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【高須基仁 人たらしの極意】ゴーン逮捕に悲喜こもごも 驕る平家は久しからず…戦後思い出し妙な爽快感

 私の父は大日本帝国海軍で江田島出身の兵士であった。南太平洋ソロモン諸島で終戦を迎え、命からがら帰国。昭和30年代はじめ頃、小学4年生の私を連れて、東京・新宿の柏木町(現・北新宿)にあった「高須額縁店」の実兄とよく酒を酌み交わした。

 あるとき、その伯父と有楽町の大きな酒場で飲んでいた。酔客の中には日本の女性をはべらせた米兵もまだ多かった。伯父は米国軍楽隊マーチのLPを持ってきていて、「基仁(もとじ)、このレコードを係の人にかけてもらいなさい」と私に言いつけた。

 離れた席の父と伯父の顔を見ながら、係の女性は「OKよ」と私に微笑んだ。

 勇壮な曲が何曲も店内に流れた後、片面の最後、アメリカ国歌が始まった。その瞬間、陽気に騒ぎながら女性を口説いていた米兵らが全員、直立不動の姿勢になった。伯父は陸軍の出身で、陸海軍の兄弟そろって精一杯のイタズラだった。

 「あのとき、わがもの顔の米兵に腹が立ってならなかった」と晩年の父は、私に敗戦国の有り様を語って聞かせた。

 日産自動車のカルロス・ゴーン会長が逮捕されたニュースを知ったとき、ふと私の脳裏を父の言葉がよぎった。妙な爽快感を覚えた。

 社内の公用語を英語にするなど、やりたい放題。コストカッターとして多くの従業員のクビを切る代わりに、『V字回復を果たした』と豪語する手法は大いに疑問を持っていた。逮捕した東京地検特捜部に心の中で拍手を送った。

 日本には、「驕(おご)る平家は久しからず」という言葉がある。諸行無常の鐘が、「ゴーン」と鳴ったのである。 (出版プロデューサー)

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