記事詳細

【中本裕己 エンタなう】大学生が拾った拳銃に支配されていく狂気 映画「銃」

 雨の夜、拳銃を拾って持ち帰った大学生が狂気に支配されていく映画「銃」(公開中)。黒光りする銃身の美しさと、いけないものを隠し持つ高揚した思いが徐々にモノクロームの画面を覆う。芥川賞作家・中村文則の原作を一気に読み終えたような虚脱感に襲われた。

 主演の大学生、トオルを演じるのは、父に村上淳(本作で共演)、母にUAを持つ21歳の村上虹郎。笑っていてもどこか醒めた表情。大学生活を謳歌してきたトオルが、銃に魅せられ、ギラギラしてゆく過程が、ノワール(暗黒)に溶け込む。端正な顔にはアイドル臭はなく、昭和の映画のような存在感がある。

 合コンでナンパした女性(日南響子)をセフレと決め込んでコトに及ぶ場面が象徴的だ。銃に魅入られた自分自身が、女に銃口を突きつけるように激しく腰を振る。根拠のない自信が漲(みなぎ)る。

 銃の行方を追う刑事役のリリー・フランキーとトオルが、喫茶店で対峙する場面には乾いた空気が張り詰める。トオルの挙動を見抜く手練れの刑事を相手に、精一杯の虚勢。銃と心中する覚悟を決めたかのような薄笑いがニヒルだ。

 ささくれだってゆくトオルの心に、友人役の広瀬アリスが寄り添う。天真爛漫な帰国子女として大学に現れた彼女は、暗黒に迷い込んだトオルを救うことができるか-。

 「百円の恋」がアカデミー賞外国語映画賞の日本代表に選ばれた武正晴監督のメガホン。(中本裕己)

関連ニュース