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【中本裕己 エンタなう】私小説のような痛みに満ちた音楽ドキュメンタリー 映画「エリック・クラプトン 12小節の人生」

 映画が大当たり中のクイーンもいいけど、クラプトンもお忘れなく。というわけで地味に公開中の映画「エリック・クラプトン 12小節の人生」をどっぷり鑑賞。ブルースの伝道師となった“ギターの神様”を生い立ちから、成功、挫折、復活まで追う珠玉のドキュメンタリー。決してサクセスストーリーではなく、私小説のような痛みに満ちている。クラプトン自身がナレーションを手がけ、暴露本のように半生を全告白する。

 実母に拒絶された少年時代の孤独、愚直に音楽を求めるあまりの「クリーム」解散、親友ジョージ・ハリスンの妻への“略奪愛”や結婚・離婚を繰り返してきた病的なまでの女性遍歴、愛息の哀しすぎる事故死、再起不能とみられた薬物とアルコールへの依存…。

 それら全てをギターが呑み込んでブルースが深みを増してゆくのが何とも皮肉。デュアン・オールマンとの「いとしのレイラ」や、ビートルズに合流した「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」など貴重なレコーディング風景も織り込まれる。

 黒人の真似はできてもソウル(魂)は奪えないと言われながら、少年時代からブルースに魅せられてきたクラプトン。欲望のまま生き、どん底も味わった当代一の白人ミュージシャンに、晩年のB.B.キングが贈った言葉が泣かせる。そのラストシーンを見るためだけでも、この映画を観る価値はある。(中本裕己)

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