記事詳細

【中本裕己 エンタなう】懐かしさが心に刺さる…メキシコ家庭を描いたワザあり作品 映画「ROMA/ローマ」

 テレビの前で見終えた後、その高いクオリティーに「ほほーっ」と声が漏れた。ネットフリックスで独占配信中の映画「ROMA/ローマ」は、1970年代初頭のメキシコを舞台に、ある中産階級の家庭をめぐる激動の1年をモノクローム画像で丁寧に描いている。

 「ゼロ・グラビティ」で監督賞などアカデミー賞7部門に輝いたアルフォンソ・キュアロン監督のいわば自伝。無限大の宇宙空間に漂う怖いまでの静謐さを描いた受賞作とは正反対の、人間くさいホームドラマだ。

 夫妻と4人の子供、祖母の大家族で暮らす医者の一家で、メイドとして働くソフィア。家事や子供たちの世話から飼い犬のフン掃除まで一日中、追われるがラジオに合わせて鼻歌をうたう若い横顔に悲壮感はない。やがてソフィアは恋に傷つき、また一家の夫婦仲も怪しくなって、不安を感じた子供たちのケンカも絶えなくなる。外では政治的混乱からデモが頻発。そうした日常が、水滴に至るまで生き生きと美しく、冷酷に映し出される。悲しみを経てソフィアが成長するラストは、じわっと感情が揺さぶられた。

 途中、SF映画に感化された少年が手作りの宇宙服で走り回る場面はご愛嬌。「ALWAYS 三丁目の夕日」をもっと普遍化したような、どの国の人が見ても懐かしく心に刺さるワザありの作品。今年のアカデミー賞で、配信作品が外国語映画賞と作品賞のダブル受賞という超異例の事態もあり得る。(中本裕己)

関連ニュース