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【BOOK】NHK元アナウンサー・鈴木健二さん 90歳「語り部」からの遺言 「戦闘は終わったけど戦争はまだ終わっていない」 (2/2ページ)

 --「終戦」ではなく「敗戦」の言葉を使うそうですね

 「毎年、8月15日を『終戦記念日』と呼び、NHKでも、(国民が正座し、うなだれているような)同じ映像を流しています。ただ当時、玉音放送の意味を分かった人は少なかった。あれは後で“つくった映像”ですよ。8月15日は天皇陛下が陸海軍に『戦闘を止めよ』と命じた日に過ぎない。本当は9月2日、米軍ミズーリ号の艦上で日本政府の代表が降伏文書に署名したときが“その日”なのです」

 「それから、私は確かに『戦闘』は終わったけれども、『戦争』はいまだに終わっていないと思っています。当時、同世代の若者たちがたくさん戦死しました。沖縄戦で犠牲になったひめゆり学徒隊の少女たちもそうです。南方やシベリアでは、いまだに100万を超える人たちの遺骨が残されたままになっている。どうして『戦争が終わった』といえるでしょうか」

 --アメリカ人は、原爆投下前に良心を失い、日本人も戦後、良心を破壊された、と

 「今の日本では、目を背けたくなるような悲惨な事件が続いています。親殺し、子殺し、無差別殺人、家庭内暴力、高齢者の孤独死…。家族の会話も、思いやりも、気配りも、礼儀も、マナーもどんどん失われてゆく。お年寄りを目の前に立たせたまま、電車の優先座席でふんぞり返っている若者や、“歩きスマホ”でぶつかってきても知らんぷりの女性も。もっと大人が叱るべきです。『イマドキの若いヤツは』ってね」

 ■あらすじ 卒寿を迎えた著者にはどうしても後世へ伝えたいことがあった。昭和20(1945)年3月10日、東京大空襲の実体験だ。わずか3時間で約10万人が亡くなり、東京の下町は一面の焼け野原に。両親と3人で悪魔のような猛火から逃げ回った著者は当時16歳。「昭和」が遠くなり、「平成」が終わろうとしている今こそ、悲惨な戦争を、記憶を、風化させてはならない、と力を込める。

 ■鈴木健二(すずき・けんじ) 1929年東京生まれ。90歳。東北大卒。52年NHK入局、看板アナウンサーとして、「クイズ面白ゼミナール」「歴史への招待」「紅白歌合戦」の司会などを担当する。定年退職後は、熊本県立劇場、青森県立図書館の館長として、村おこしや障害者支援、読書の大切さを訴える活動を行う。著書も多く、「気くばりのすすめ」はベストセラーとなった。

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