記事詳細

【大谷能生 ニッポンの音楽教育150年間のナゾ】小学校の音楽の授業で、僕たちはいったい何を習ってきたんだろう? (1/2ページ)

(1)

 はじめまして。音楽にまつわるさまざまなナゾについて調べたり、書いたり、実際に演奏して確かめたりする活動をしている大谷能生と申します。これまで硬軟とりまぜて、いろいろな本や音源を出してきたのですが、先月、「よりみちパン!セ」という青少年向けのシリーズの一冊として『平成日本の音楽の教科書』(新曜社)をリリースしました。

 どんな本なのか一言でいうと、<平成三十年間で使われてきた小・中・高校の音楽の教科書を全部読んで、そこに何が書いてあるのかを確認する>という内容で、つまり、<学校教育では、いま、どんなやりかたで「音楽」を教えているのか?>についてまとめてみたというわけです。

 なんでそんなメンドクサそうなことをやろうと思ったのか、というと、こんなことがありました。

 ある小さなライブハウスに出演したときのことです。演奏が終わったあと、そのライブでぼくはサックスを吹いていたのですが、客席に下りてわいわいみんなで歓談している最中に、とっても音楽が好きそうな男性のお客さんの一人が、お酒も入ってちょっといい気分の感じで話しかけてくれました。

 「演奏よかったです。あの、じつは……ぼくもサックスをやってみたいと思ってるんですが……」

 「いいじゃないですか。楽器。サックス。やってみてくださいよ」

 「いや……でも……サックスって高いんですよね?」

 「そうですね。あんまり安いのはおススメしませんが、そうだなあ、いまだと7~8万くらい出せばキチンとしたものが買えますね」

 「なるほど……でも……ぼく、これまで何にも楽器って触ったことないんですけど……」

 「大丈夫ですよホント。サックスって、意外と音はすぐに出るようになりますし」

 「そうですか……でも……ぼく、こう見えてもう五十歳近いんですけど、年齢的にもう無理じゃないですか?」

 「年齢とか関係ないですよマジで! ちゃんと先生が丁寧に教えてくれますし」

 「そうですか……いやー……いまから習うとか……どうなんでしょう。……ちゃんと子供の頃から、何か楽器とか、やっておけばよかったなあと……いま思うと……」

 と、言って、その人は去っていきました。