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【織田哲郎 あれからこれから】あの“強盗事件”のおかげで、音楽への恋心を取り戻した (1/2ページ)

 2000年にスペインで強盗に首を絞められ声帯を損傷してから、1年ぐらいリハビリの日々を送りました。

 それは声帯のリハビリであるとともに、アル中のリハビリでもありました。実はそっちのほうが、この時期、本当の意味で重要だったのかもしれません。このリハビリの後、また酒は飲み始めますが、それでもこの間断酒したおかげで命が助かった気がします。

 リハビリとして発声練習を繰り返しつつ、1人でギターやピアノを弾きながら、学生時代に好きだった歌をいろいろ歌ってみたりしていました。

 これがやはりなかなかうまく歌えなくてイライラもするのですが、プロとして音楽を創り出すことに追われる前、単に音楽が好きでしょうがなかった頃の純粋な音楽への恋心を徐々に取り戻すことができました。

 そしてこのときに歌と楽器の地道な基礎練習の癖をつけたことが、その後の音楽家人生に本当に役立っているのです。

 歌の音域のほうは、ミの音しか出なかったのがソの音くらいまでは出るようになり、損傷した声帯のコントロールにも少しずつ慣れました(本当に慣れるまではそれから10年かかりましたが)。

 そして、事件以来初めて 久しぶりに人前で歌ったファンクラブ限定のイベントで、なんと歌っている最中に泣けてきて、歌を中断してしまうという、いい年こいたおっさんとしてはかなり恥ずかしい姿を披露してしまいました。

 おそらく生まれて初めて、私は“歌える自分”というものに心から感謝しました。それまでは歌なんて歌えて当たり前、声なんて出て当たり前だったのです。結果的に音域が狭くなろうが、自分の歌をちゃんと愛せるようになった今の歌のほうが私は好きです。

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