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【中本裕己 エンタなう】志村けんを笑いながら偲ぶ 映画「ザ・ドリフターズの極楽はどこだ!!」

 コントの志村けんもいいが忘れちゃいけないのが、ザ・ドリフターズ主演の映画「全員集合!!」シリーズ。中でも、いかりや長介が戦中派の中年男を演じ、加藤茶扮する万年浪人生との父子のすれ違いを描いた「ザ・ドリフターズの極楽はどこだ!!」(1974年)は心に染みる松竹らしい異色の人情喜劇だ。

 東京の下町。ラジオの音楽とともに夜が明け、弁当づくりの音が響く。花環製造会社に勤める黒木長作(いかりや)は、妻に先立たれ、一作(加藤)と花子(沢田雅美)を男手ひとつで育ててきた。万年係長の長作はエリート部長(仲本工事)に叱られ、部下(高木ブー)に愚痴る日々。そんな苦労も知らず大学浪人5年目の一作は、仲間とバンドの練習に夢中だ。

 ある日、一作は仲間のサブ(志村)にそそのかされ、デビューの準備資金に親父の退職金を勝手に前借り。一方の長作は惚れ込んだスナックのママ(篠ひろ子)のために退職金を使おうとしていた。

 この年の「小野田寛郎さん生還」を反映した長作と戦友(佐野浅夫)の酩酊が切ない。対照的なのが底抜けに明るい一作と、屈託ない笑顔を見せるサブの“加トちゃんケンちゃん”コンビ。

 加藤が実演するドラム、天地真理やキャンディーズの挿入歌など、娯楽映画としてのサービス精神も一流。社長役の玉川良一や下宿人の豊岡豊がとぼけた味わいで、ドリフを食う勢い。人気の看板に頼るだけではない演技派ドリフと脇役陣の丁々発止が面白い。(中本裕己)

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