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【みうらじゅん いやら収集】「自家製キスマーク」が揺るがした同朋の絆

 彼女ができることがもちろん、一番の憧れだったけど、声など掛ける勇気もないし、まして彼女の方から言い寄ってくるなどSF話だった高校時代。全て、その原因を通ってる高校が男子校であったことにしてた。

 しかし、クラスメイトの中には他校の女子と付き合ってる奴もいたし、ヤンキーとなれば、その先にあるセックスをしている奴もいると(噂には聞いた)。

 とても虚しい学園生活ではあったけど、そんな僕にも数人の同朋がいて、「今からそんなことしてる奴はいつか罰が当たる」と、よく話し合ったものだ。

 そんなある日、その同朋の中の一人が学生服を着いで、白いYシャツを腕まくりして僕に見せた。「何しとんねん?」、聞いたが奴は「分からんけ?」と、逆に返してきた。

 それでもポカンとしてる僕に、今度は二の腕のあたりを近づけてきて「何か、あるやろ?」と、言う。

 じっくり見たがブヨか何かに噛まれた跡ぐらいしかない。呆れて、「汚いもん見せんなよ」と言ったら、「アホかお前、この跡が何の跡か分らんか」と、何だか得意気な顔をして、「キスマークじゃ、キスマァーク!」と、大きな声を上げた。

 大変、ショックだった。誇りには当然、思ってなかったけど、同朋の絆であった童貞を一早く捨てた証拠を見せつけられた悔しさから、「そんなもん嘘や!」と、こちらも大きな声を上げた。

 すると奴は笑い出し、「本気にしたんけ?お前、アホやろ」と言った。そして、自らが腕に口を近づけ、吸い上げた跡だと自家製キスマークの付け方までを僕に教えた。

 「本気になんかしてへんよ!」「嘘こけ!」

 しばらくして僕ら同朋の間で、自らの口が吸い付き可能な場所にキスマークを施すブームが巻き起ったのだった。ちなみに今回の写真は、久々に付けてみた僕の二の腕である。

 ■みうら・じゅん 1958年2月、京都市生まれ。イラストレーター、漫画家。エッセイストとしても知られ、97年に「マイブーム」で新語・流行語大賞を受賞した。近著に『ラブノーマル白書』(文春文庫)、『みうらじゅんの松本清張ファンブック「清張地獄八景」』(文芸春秋)など。新刊『ひみつのダイアリー』(文春文庫)が発売中。

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