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【ドクター和のニッポン臨終図巻】田中雅博さん、苦しみケアした“僧侶医師” 「いのちの苦しみ救うことは医者にはできない」 (1/2ページ)

★田中雅博さん

 「なんで医者なのに、死ぬ話ばかりやっているんだ?」と聞かれることがあります。「医者は病気を治すのが仕事だろう? 死のことなんて、お坊さんに任せておけばいいんだよ」と皮肉まじりに。

 果たして本当にそうでしょうか。死と向き合わない医療者があまりにも多いから、死の直前まで過剰な延命治療を続けた結果、余計に患者さんを苦しませてしまう。そんな現状を打破したくて「痛くない死に方」や「平穏死」と題した本を数冊書いてきました。死は、お坊さんだけの仕事ではなく、医者の仕事でもあると思うのですが。

 そんな批判をいただくたび、思い出す顔があります。医師と僧侶の二足のわらじを履いたまま逝かれた田中雅博さん。内科医で、栃木県益子町にある西明寺の住職でした。テレビにもよく出演されていたので、ご存じの方も多いでしょう。2017年3月21日、70歳で逝去。膵臓(すいぞう)がんでした。

 数年前、ある医学会のシンポジウムで一緒に登壇したことがご縁で、意気投合しました。「死ぬのが怖い」と訴えてくる患者さんにどんな言葉をかけたらいいのか? 正解のない問いを日々模索しているのだといわれる田中先生に、なんだか私と似ているなと感じました。

 寺の息子として生まれた田中先生は、父親の勧めもあり医学部に入り、1974年に国立がんセンターに入職しました。しかし、がんの治療法も少なく、治る見込みのない進行がんの人を相手に日々絶望に暮れていたそうです。「肉体的苦痛を抑えることは医者にできますが、いのちの苦しみ、いわゆるスピリチュアルペインを救うことは、医者にはできないと気が付きました」。父親が医者になれと言った理由も、このあたりにあったのでしょうか。

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