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【zak女の雄叫び】《zak女の雄叫び お題は「残」》「居残り」と母の背中

 いっこうにまとまりのつかない原稿と向き合いながら、これは「居残り」だなと思った。

 「残業」というと、膨大な仕事量を抱え、多忙を極めるイメージだが、居残りは鈍くさく、能力が低くて帰れないという語感がある。

 ひとり者で、際限なく時間を使えるのがいけないのかもしれない。会社の生き残りをかけ、より密度の高い仕事を求められるなか、どんどん居所がなくなっていくのを感じる。

 昔から何をするのものろかった。幼稚園では、お弁当を全部食べ終わらないと帰してもらえなくて、お迎えの母は他の子が帰った後も一人で待たされていた。工作の時間もいつも居残り。周囲の様子は覚えていなくて、あせるでもなくただ黙々と作業していたような気がする。つらい、恥ずかしいという感情は、まだ芽生えていなかったのだろうか。それとも、いやな記憶は消しているのか。

 大人になってからしきりに思うのは、ずっと待たされていた母のことだ。人並みのことができないわが子のさまに、若い母親はどんなに不安だったろう。

 先日、母に付き添って病院に行った。昨夏、手術を無事に終えた後の経過観察で、さほど心配はしていない。病院の前で別れ、それぞれ一人暮らしの家に帰る。少し離れたところから見送ると、背中が曲がって本当に小さくなった。

 身勝手なことに、母の体を気遣うよりも、ひとりぼっちになった自分を想像して、ぞわっとした恐怖にすくんでしまう。

 母が生きている間は、心配をかけるようなことをしてはいけない。とはいえ、居残り続きの日々にも疲れてしまった。さて、どうしたものだろう…。

(N)

【zak女の雄叫び】取材や日常…。女性記者21人が月ごとのキーワードで本音を綴るリレーコラムです。9月のお題は「残」です。