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【安達純子 健康寿命UP術】“ながら歩き”で速度が極端に遅くなるなら… 軽度認知障害を見逃すな (1/2ページ)

 同僚や家族と話しながら歩くと速度が著しく遅くなることはないだろうか。試しに、普通に歩く速度と、数字の100から7ずつ引き算をしながら歩いたときを比べてみよう。速度が極端に遅くなるようなら、認知機能の低下が関与している。その程度がひどくなると軽度認知障害(MCI)である可能性や、MCIから認知症へ移行する可能性が高くなることが報告されている。さらに脳の構造の変化が関わっていることが、新たに分かってきた。

 「計算しながら歩くといった“2重課題条件下”で、歩行速度が顕著に遅くなるMCIの高齢者では、脳の嗅内野(きゅうないや)の萎縮が認められました。嗅内野の働きの低下が、2重課題条件下で歩く能力の低下に関連していると考えられます」

 こう説明するのは、東京都健康長寿医療センター研究所社会参加と地域保健研究チームの桜井良太研究員。今年5月、カナダのウエスタンオンタリオ大学医学部との共同研究で、2重課題条件下の歩行速度の低下と、嗅内野の萎縮の関連を明らかにした。

 嗅内野は、その形状から“脳のタツノオトシゴ”に例えられる海馬(かいば)に隣接した小さな器官。海馬は、記憶などを司ることで知られるが、嗅内野は、海馬への情報を中継する役割をしている。つまり、嗅内野が萎縮していると、情報の中継器が壊れたような状態になり、2つの課題を同時にスムーズにこなすことが難しくなると考えられる。

 「認知症では嗅内野の萎縮が早期から起こり、記憶の機能が衰えるといわれています。認知症患者では嗅覚も阻害されることが知られていますが、この嗅内野は、文字通り嗅覚にも関与しています。嗅覚の検査は簡単に測定することができません。一方、2重課題条件下の歩行は、簡単に調べることができるのが利点です」

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