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【zak女の雄叫び】《zak女の雄叫び お題は「晩」》人生の「晩」は楽しい? 「終活」に夢中の母

 60代後半に差し掛かった母親が最近、終活に夢中だ。盆や正月に帰省する度、「見て見て!」とせがむA4判の「エンディングノート」には、見慣れた丸文字がびっしりと並ぶ。葬式は家族だけで、こぢんまりと。お花はユリとカスミソウ。連絡をするのは、同級生のこの人とこの人。必要な書類は自宅のこの引き出しに…。

 ノートを指さし説明する母親は、自分の死後のことについて話しているはずなのに、温泉旅行の計画でも練っているかのようにはつらつとしている。「はい、はい。分かりましたよ」といい加減な返事でやり過ごそうとして毎回母親の機嫌を損ねるが、娘の本心は寂しいような、悲しいような、複雑な気持ちだ。

 就職し、結婚しても、何かにつけて「元気?」「いつ帰ってくるの?」「ごはん食べてる?」と電話やメールをよこしてくる母親。「子離れがまだまだだな」と思っていたが、30を過ぎても「親離れ」できていないのは自分であることに気付かされる。悔しい。

 しかし、母親はなぜ突然こんなことを始めたのか。いわゆる「終活ブーム」に乗っているだけなのだろうか。ミーハーな母のこと、ありえる話だ。第一、60代なんてまだ若い。世間の60代はみんなそんなことを考えているのだろうか。

 有料老人ホームなどを運営する「オリックス・リビング」(東京)が昨年、40代以上の男女1238人を対象に実施したインターネット調査では、エンディングノートを「作成している」と回答したのは、わずか3・8%。だが、「作成する予定はある」と回答したのは60代以上の女性で、59・8%に上った。過半数が死後のことを「考えてはいる」ということなのだろう。

 物の本などによると、エンディングノートを作成することで、その人が人生の最後をどう過ごしたいかや、延命治療など「もしも」の時の難しい判断について、あらかじめ家族で話し合うきっかけになるのだという。熊本市や群馬県富岡市など、独自のエンディングノートを市民に配布し、ノートの書き方講座などを実施している自治体も増えているようだ。

 母親に尋ねてみると、ここ10年ほどで祖父の遺品の整理や、認知症の祖母の介護を経験したことが「終活」の直接的な動機になったようだ。「あなたたちにはできるだけ迷惑はかけたくないし、最後くらい自分の好きにしたいじゃない」。そんな母親を、母親らしく送ってあげるために、今度はじっくり話を聞いてあげようかな…。やっぱり寂しい気はするが、少しずつ、向き合っていこうと思う。(い)

 【zak女の雄叫び】取材や日常…。女性記者21人が月ごとのキーワードで本音を綴るリレーコラムです。11月のお題は「晩」です。