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【松浦達也 肉道場入門!】いつかまたこの味に… 池波正太郎が愛した「慶楽」 (1/2ページ)

★絶品必食編

 またひとつ店の灯が消える。東京・有楽町のガード沿いにある中華の老舗「慶楽」だ。1950(昭和25)年創業の広東料理を出す老舗で吉行淳之介や池波正太郎といった昭和の作家がひいきにしていた佳店である。

 名物メニューも無数にある。一般的には春巻(メニュー名は「海老巻揚」)の名店として知られるが、吉行淳之介は牡蠣油の牛肉焼きそば(「●(=虫へんに豪)油牛炒麺」)を好んだという。同じ「牛肉」でも牛肉つゆそば(「滑牛湯麺」)も名物として知られる一杯、シューマイ(「焼賣」)なども捨てがたい。

 そんな店で選ぶ最後の一食となると難しい。だが悔いを残さぬ一食となればワンプレートの「炒飯ランチ」か。

 プレートの上に型で抜かれた炒飯が鎮座し、手前にメーンの肉や卵を使った日替わりの主菜、奥に青菜炒めなどの副菜、それにスープと胡麻団子がつく。

 一人で訪れてこれだけの種類を食べられるメニューが炒飯ランチなのだ。

 閉店までの営業日が残り10日を切ったある日、慶楽を訪れた。炒飯ランチを注文すると、女将さんから「今日はから揚げか、カニ玉か、チャーシューね」と主菜の選択肢。「から揚げでお願いします」と即答した後、店内をぐるりと見渡す。僕と同じような一人客が多く、目の前の皿だけでなく、この空間を慈しむように味わっている。

 普段より少し長い待ち時間を超えて、炒飯ランチはやってきた。

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