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【江口まゆみ 酔っぱライターのお酒見聞録】震災乗り越え極めた“辛口” 宮城県「希望の光」 (1/2ページ)

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 宮城県石巻市の日高見(ひたかみ)は、廃業寸前の蔵へ戻って来た平井孝浩社長が、28年前に新しく立ち上げたブランドだ。その洗練された味わいが人気となり、リリースから10年で会社が立ち直り、その後は県外でも順調に販路が広がっていった。

 東日本大震災に見舞われたのは、その矢先だったという。仕込み蔵で発酵中だった20本のタンクは、大地震の揺れであふれ、5万リッターのもろみが流出した。

 蔵は海岸線から2・5キロ内陸の北上川の扇状地にあり、川からも1キロ離れていたが、津波は川をさかのぼって襲いかかった。水は膝上まで達し、3日間引かなかった。

 ライフラインはすべて絶たれ、電気は2週間も来なかった。発酵管理ができなくなったもろみが、真っ暗な蔵の中で、シュー、シュワー、と不気味な音を立て続けていた。

 やっと電気がついたとき、恐る恐る残ったもろみを搾ってみた。生きているだろうか? 飲んでみると、日高見とは違うけれど、重厚な味わいの酒になっているではないか。その時、「生きているよ!」と酒の声が聞こえた気がした。暗闇の中に見えた一筋の光だった。この酒を、「希望の光」と名付けて販売したのが、日高見復興の第一歩となった。

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