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【BOOK】「江戸無血開城なければ日本は栄えるどころではなかった」 冲方丁さん『麒麟児』 (1/3ページ)

★冲方丁さん『麒麟児』KADOKAWA(1600円+税)

 勝海舟がいなければ、今ごろ「日本という国」はなかったかもしれない。官軍の西郷隆盛との会談で、江戸無血開城を実現させた“奇跡の2日間”を描く。脅し、ハッタリ、諜報…手練手管を駆使して不可能を可能にした男。こんな豪腕、今の日本にほしいねぇ。(文・南勇樹 写真・斎藤浩一)

 --勝海舟、どんな男ですか

 「個人的に『幕末』という時代はあまり好きじゃないんです。過激で混沌としていて、楽しくない。そんな中で勝は理性があり、人間らしい自分を保った稀有(けう)な人物だと思う。怖いものは怖いというし、ときには、殿様(徳川慶喜)を罵(ののし)ったり…。それから、目標達成のためには、あらゆる手段を使うし、『敵方』まで取り込んで利用する、失敗にも強い。こんな凄腕はいませんよ」

 「ただ、勝のことを調べるのは大変でした。複数の日記が残っているんですが、それを読み込むのは歴史の専門家でも苦労する。なぜなら(複数の日記で)日付や場所がバラバラだったり、とにかくめちゃくちゃ。そのすきまから心情をくみ取り、小説家的な“裏読み”をしたり。結局、そうした作業に4、5年かかりましたね」

 --勝にしろ、西郷隆盛にしろ「書き尽くされている感」もあるが

 「歴史物といえば、その時代を映すものでしょうが、私は『現代だからこそ読める勝海舟』を書きたかった。今の日本が置かれている状況や、保護主義が台頭し、争いや混沌に覆われている国際社会への教訓があると思うからです。たとえば、対外的なもめ事が起こったとき、それを恒久的な種にしてしまうのか、それとも平和への支えにするのか、は為政者のジャッジにかかっています。なぜ、勝は西郷の心をつかむことができたのか、どうやって『無血開城』をやれたのか。流血が日常的だった時代の、流血なき幕末ものですね」

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