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【BOOK】「江戸無血開城なければ日本は栄えるどころではなかった」 冲方丁さん『麒麟児』 (2/3ページ)

 --もしも、江戸無血開城がなければ、その後の日本の姿は

 「まず江戸は、惨たんたる状況になる。さらに江戸以北は困窮を極め、復興過程で外国の駐留地にされる。品川や横浜も取られていたでしょう。ましてや北海道など、どうなっていたか。つまり東日本は“植民地”のような状況。日本は『西日本』だけの国になる。当然、天皇も京都から動けない。家を焼かれ、家族などを殺されたりしたであろう江戸の民衆は、新政府へのうらみを強めるから、テロが頻発する…。国が栄えるどころではなかったはずです」

 --そうした状況の中で勝が目指したものとは

 「幕末当時の日本はいろんな面でバラバラでした。めざす政治体制も、法律も、言葉さえ違う。勝は、その違いを踏まえた上で、どうやって次へ進むか。『日本人』という概念を意識し、日本という国家の存続を考えたのです。だから、明治維新になり、新政府ができたときは、誘われても参画しなかった。すでに目標は達成できたという思いがあったからでしょうね。勝は根っからの『民衆派』で、官職に就くよりも『野』にいて、明治以降は旧幕臣の貧民救済などの仕事に力を注ぎました」

 --勝のような政治家が現代で活躍してほしいものですが

 「勝にせよ、西郷にせよ、一時的に軍事的なトップには就いたが、政治的・経済的なリーダーにはならず、目標が達成されれば解任されて、後始末に奔走する。こんな人物は“見えないところ”にいるのかもしれませんが、表舞台にはなかなか見当たりません。こう言っちゃ悪いけど、商売っ気が強い福沢諭吉的な人物ならばあるいは…(苦笑)」

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