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【BOOK】江戸時代後期、武家の存在理由は…自裁ができること 青山文平さん『跳ぶ男』 (1/3ページ)

★青山文平さん 『跳ぶ男』 文藝春秋(1600円+税)

 ■ジャンルの意識はなく、環境変化と格闘する普通の人間のもがく姿を描くことだけ

 直木賞受賞から3年目の春、「私にとって節目となる作品」が完成した。江戸時代後期の武家のあり方に能を絡めた理由は何か。まずは素材ありき、という著者の創作手法は、本作でどう活かされたのか。(文・たからしげる 写真・早坂洋祐)

 --本書が生まれた経緯を教えてください

 「今回は最初に、貧しい小国の藩主が将軍に『貸し』をつくって国を立て直すという構想がありました。同時に、貸しの手がかりも浮かんでいましたが、いくら考えてもこれは、という仕掛けが出てこず、一度は執筆を断念しました。でも、ともあれ初回だけでも書いてみようと机に向かったら、寝かせておいた素材たちが立ち上がって、望外のものが“穫(と)れた”のです。で、本腰を入れて隔月連載に取り組んだんですが、壁は高く、脱稿まで2年近くかかってしまいました」

 --実在のモデルはいるのですか

 「主役と相手役にモデルはいません。藩名も能の曲名から取りました。でも、今回は舞台が江戸城の深部なので、そこで関わる大名たちは実在にしないと、書くのに都合のいい配役になって小説がゆるんでしまう。なので、大名のあらかたは藩名ともに実在です」

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