記事詳細

【BOOK】江戸時代後期、武家の存在理由は…自裁ができること 青山文平さん『跳ぶ男』 (3/3ページ)

 --なぜ、時代小説を書くのですか

 「実は、いまの私にはあまりジャンルの意識はありません。エンターテインメントとか純文学とかの境目の意識も薄い。銀色の鯵を書こうと思ってから、そういう気持ちになりました。考えているのは、環境変化と格闘する普通の人間のもがく姿を描くことだけ。これからも変わらないでしょう。あえて時代小説の美質について言えば、人間を肯定できる表現分野ではないかという気はしています」

 --現代の武士とも言えるサラリーマンをどう思われますか

 「いまの勤め人は大変です。私が勤めていた時代は右肩上がりで、流れるプールに浮かんでいるようなものでした。いまプールの水は静止して、自分で泳がないと沈みます。自分で考えて、自分だけの泳ぎ方を編み出さなければなりません。時代は本当に厳しいけれど、自分を信じてがんばりましょうと言いたいものです」

 ■あらすじ 土地も金も水も米もない、ないない尽くしの小さな藤戸藩に、能役者の長男として生まれた屋島剛(たける)は、幼くして母を亡くし、嫡子としての居場所を失った。以来、3つ年上の頼れる友で、才能豊かな岩舟保(たもつ)の手を借りながら独習で能に励んできたが、ささいなことで保が切腹を命じられた。さらに、規定の年齢に達しない藩主が急死して、剛が身代わりとして立てられることになった。そこには、保が遺した言葉と藩の事情があった。

 ■青山文平(あおやま・ぶんぺい) 1948年、横浜市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。70歳。経済関係の出版社に勤務後、フリーライターを経て、92年『俺たちの水晶宮』で中央公論新人賞(影山雄作名義)を受賞。2011年『白樫の樹の下で』で松本清張賞、15年『鬼はもとより』で大藪春彦賞、16年『つまをめとらば』で直木賞をそれぞれ受賞。他に『流水浮木最後の太刀』『約定』『伊賀の残光』『半席』『励み場』『遠縁の女』『かけおちる』『春山入り』などがある。

関連ニュース