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【江口まゆみ 酔っぱライターのお酒見聞録】『実務派社長』と『名杜氏』のタッグで進化 山口県「五橋」 (1/2ページ)

★山口県「五橋」(上)

 錦帯橋(きんたいきょう)は、山口県岩国市最大の見どころだ。1673年に建造された木造の橋で、5連のアーチを描く優美な姿と、全長193・3メートルにもわたる巨大さは、見る者を圧倒する。

 ここからさほど遠くない場所に、岩国の地酒「五橋(ごきょう)」の蔵、酒井酒造がある。酒名の由来は、言わずもがなの錦帯橋だ。

 10年前訪れたときは、まだ先代の社長だった。前社長はいつも粋な和服を着こなし、酒に合わせて懐から取り出す「マイ猪口」は、車1台分するほど高価だと聞いた。少々浮き世離れした趣味人だったのは、しっかりとした番頭が、実務を担っていたからだ。古き良き時代の蔵元は、皆このようだったのかもしれない。

 その跡を取ったのが、娘婿の酒井秀希さん。まったくの異業種から、酒業界に入った。しかしたいへんな酒好きで、奥さまとのなれそめもお酒の席だったというから、縁である。

 酒井社長は、バリバリの実務派。全国の酒の会に出席し、営業する毎日である。この日もシンガポールから帰ってきたばかりという。

 入社当初は、とにかく日本酒のつくりを知らなければと、東広島の酒類総研へ研修に行き、会社でも2~3年は蔵人として酒づくりを経験した。本人いわく、「朝は早く、水は冷たく、洗い物は多い」という、大変な重労働にも耐えた。

 今は商品企画をする立場だが、「こういう酒をつくれとは、言ったことがありません。よそがやっていないことを見つけて、こんなの面白いんじゃない? とアイデアを出す程度です」という。

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