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【BOOK】沖縄の「戦果アギャー」に魂を惹きつけられた 平成最後の直木賞受賞・真藤順丈さん『宝島』 (2/3ページ)

 --書き始めはいつ

 「構想自体は『畦(あぜ)と銃』を書き終えた7年前、長篇の依頼をもらって、本作の最初のアイデアを担当者に話しました。琉球警察というアメリカの信託統治下にあった現地の警察小説を書こうと思っていました。事件を扱うわけですから、調べるうちに基地に侵入して物品を奪い生活の糧にする“戦果アギャー(戦果をあげる者)”のことを知りました。その存在に魂を惹きつけられるところがあって、これしかない、と」

 --具体的には

 「自分が表現したいものが戦果アギャーには詰まっていた。(戦後の)沖縄が立ち上がっていく段階での、青春時代の疾走感、体制を蹴り上げるたくましさ、ある種のフィクショナルな英雄像を重ねられた。裏には“悲しみ”がありながら、スコンと突き抜けるような、風通しのよい生命力を感じたんです」

 --『畦と銃』も土地に根ざした物語です

 「デビュー作『地図男』は地名や地図記号にインスパイアされた物語でしたし、ある意味では同じアプローチともいえる。土地から立ち上がるエネルギーを創作の燃料として、民俗的なナラティブ(語り)をやりたかった。また、1人の超越した存在を登場させ、その人の行方や動向をめぐって物語の拵(こしら)えを固めていくことも多いです。『砂の器』や『火車』のように、個人の肖像をたどることで時代を浮き彫りにしていくありかたは、日本の大衆小説のある種の雛型になっていると思う」

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