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【江口まゆみ 酔っぱライターのお酒見聞録】西日本豪雨災害からの復興、曇りなき再起の酒 広島県「柄酒造」 (1/2ページ)

★広島県「柄酒造」(上)

 広島県東広島市の安芸津(あきつ)町は、軟水醸造法発祥の地だ。酵母の栄養分が少ない軟水でも、安全においしい日本酒がつくれるよう、三浦仙三郎という酒造家が確立した方法で、後の吟醸づくりの基礎となった。

 この町で軟水醸造法を受け継ぎ、於多福(おたふく)と関西一を醸す蔵が柄(つか)酒造だ。蔵元の柄宣行社長が杜氏も兼ね、ほぼ一人で酒づくりをしている。場所は安芸津港へ流れる三津大川のすぐ近く。そのため昨年の西日本豪雨では、川が氾濫し、壊滅的な被害を被った。

 ボイラー、放冷機、冷水機、麹室…何もかも使えなくなり、「これはもうダメだ」と、柄社長は廃業を覚悟した。とくに麹室がなくなったのがショックだったという。

 軟水醸造法では、麹菌を米の内部までしっかり食い込ませ、「突きハゼ」と呼ばれる麹をつくる。柄社長も麹づくりには強いこだわりがあり、麹によって米の味わいを引き出すつくりを旨としている。だから、年内に麹室を直せそうだと聞いたときは、一筋の光が見えたような気がした。

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