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【がん治療最前線】“薬剤の患部配達”阻む壁を打ち破る! がん細胞を狙い撃つ新たな治療法 (2/2ページ)

 「人間の悪性度の高いがんの周りは、間質(かんしつ)という組織で覆われていることがわかりました。マウスのがんは間質がほとんどありません。マウスでは薬剤が届きやすくても、人間の場合には間質が邪魔になって、がんにADCの薬剤が到達できなかったのです。つまりがんは間質という防御壁を持つようになります」

 がん細胞は増殖するときに、周りの正常な毛細血管を傷つけていく。すると血を止めるための不溶性フィブリンという栓が形成される。それが繰り返されることで、コラーゲンなどを含むがん間質という異常な組織が形成される。悪性度の高いがんほど間質が多い。そこで、松村氏が考えたのは、フィブリンに着目した間質ターゲット療法(CAST療法)だった。

 「がんの周りにはフィブリンがたくさんついています。それをターゲットにすれば、間質がたくさんあっても、効率よくがんを含む組織を攻撃できます。現在、その創薬を進めているところです」

 間質ターゲット療法の進展は、次回紹介する。(安達純子)

 ■がんのドラッグ・デリバリー・システム(DDS)とは
 がんに薬剤を届けるシステムの総称。1986年に松村保広氏と前田浩氏(熊本大学名誉教授)が論文発表した「EPR効果」により、世界的にDDSの新しい薬剤等の研究が進んでいる。
 がんによって生じた新しい血管は、正常な血管と比べて、免疫グロブリンG(IgG・抗体の一種)のような高分子が透過しやすく、がんにたまりやすい。高分子の薬剤ががんへ集積する特性をEPR効果という。抗体製剤を用いた新しい薬の開発により難治性のがん治療の進展が期待されている。

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