記事詳細

【ドクター和のニッポン臨終図巻】若者を支援し続けた熱き天才! エンジェル投資家・瀧本哲史氏

 〈エンジェル投資家〉という言葉を、皆さんはご存じですか? 恥ずかしながら私は、この方の訃報で初めて知りました。

 その名は瀧本哲史さん。麻布高校から東京大学法学部へ。そのまま東大助手に採用されるも、大学教員に将来性を感じられず、マッキンゼー&カンパニーに転職し、その後独立。日本交通の経営再建に携わるなどし、エンジェル投資家としての活動を始めます。

 2007年からは、京都大学産官学連携センターの客員准教授となりました。瀧本さんの授業はまたたく間に人気となり、メディアからも引っ張りだことなります。

 その瀧本さんが、8月10日に東京都内の病院で亡くなったと京都大学が発表しました。

 まだ、47歳という若さでした。闘病の詳細は一切明かされていないようです。病名は伝えないでほしいと、ご本人が遺言されていたのかもしれません。以前は割とぽっちゃり気味の体形だったのが、今年に入って急激に痩せられたのを心配する声も上がっていました。進行性の病気に冒されていたのではと推測しています。

 いくつかの追悼記事を読みましたが、瀧本さんと仕事をされた著名な人々が、異口同音に「これほどの天才はいない、彼の死はわが国にとっても大きな損失である」とその死を悼んでおられます。

 夭折(ようせつ)とは、まさにこういう方の死をいうのでしょう。

 さて、瀧本さんの肩書であった、エンジェル投資家というのは、創業仕立てでまだ実績がなく、金融機関からの融資を受けにくい起業家に対して、資金を調達してくれる裕福な個人投資家のことだそう。

 つまり、お金儲けを第一に考えている投資ではなく、若い人を応援するための投資家です。本来なら、もっと高齢の、現役を引退した富裕層の人が名乗る肩書かと思います。そのためか、瀧本さんは、生年月日さえもあまり公表したがらなかったそうです。

 高齢化を突き進み、疲弊化していくこの国で、若い世代にもっとアクションを起こしてほしい…若者世代を応援するその熱意は、投資事業だけでなく、数々の著書の中にもあふれていました。

 この原稿を書くにあたり、私も初めて、瀧本さんの著書を買いに本屋に走りました。『僕は君たちに武器を配りたい』『君に友だちはいらない』『武器としての決断思考』…若者よ、こんな時代だからこそ立ち上がれ! 組織に染まるな、自分で考えよ! …ビジネス書かと思いきや、まるでこれは大好きな尾崎豊の歌の世界ではないかと、ついつい嬉しくなりました。

 彼の肉体は消えてなくなりましたが、その言葉はずっと生き続けるはず。夭折した尾崎豊のように。本物の言葉は、死にません。

 ■長尾和宏(ながお・かずひろ) 医学博士。東京医大卒業後、大阪大第二内科入局。1995年、兵庫県尼崎市で長尾クリニックを開業。外来診療から在宅医療まで「人を診る」総合診療を目指す。この連載が『平成臨終図巻』として単行本化され、好評発売中。関西国際大学客員教授。

関連ニュース