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【定年後の居場所】定年前から「もう一人の自分」を育てる大切さ “生涯現役”でハツラツと働く社労士たち

 ある県の社会保険労務士制度創設50周年を記念した行事で講演する機会をいただいた。タイトルは、「黄金の15年~定年後から見えてくるワークライフバランス~」。社会保険労務士(社労士)会の会員と一般参加者の前で、定年前の50歳ぐらいから徐々に「会社員の自分」のほかに「もう一人の自分」を育てる大切さや、「定年準備に向けた行動7か条」などにポイントをおいて話した。

 国家資格である社会保険労務士は、全国で約4万1000人が登録されている。主に中小企業と顧問契約を結び、社会保険関係の申請手続きをしたり、賃金台帳の作成などに携わる。また人事や労務管理のコンサルタントとして企業の相談に乗って活躍する人も増えている。資格を取得して企業内で社員として働いている人もいる。

 実は私の15年ほどの取材の中で、何度も社労士の方々にお話を聞いている。会社員や公務員として勤めながら資格を取得して、中途で退職して独立したり、定年退職後に開業する人が比較的多いからだ。

 社労士は、リタイア世代に大きく関わる健康保険、介護保険のほか、公的年金についての知識も豊富なので、長寿化の時代を迎え、中高年世代の相談役としての役割もある。また、組織で長く働いた経験もあって人間関係の機微に通じているので、社員に対する処遇や福利厚生などについて経営者の良きアドバイザーになっている人が多い。昨今の「働き方改革」においても、活躍の場はますます広がるものと思われる。

 講演の当日は、50周年の式典や懇親会にも参加したので、役員をはじめ多くの社労士の方々とお話しする機会を得た。80歳を超えて現役で活躍されている人や、50代後半で社労士試験に合格して会社を早期退職、70代半ばの現在は何人かを雇いながら事務所を運営している人もいた。

 その皆さんが本当にお元気で驚いた。同年代の再雇用で働いている人と比べると、両者の差は歴然なのである。これは定年後のことだけではない。私は50歳から会社員とフリーランスの二足のわらじ生活を10年間続けてきた。その時にも同様なことを感じていた。つまり同僚の会社員に比べて、フリーライターやフリーの編集者、カメラマンは若い感じがして、はつらつとしている人が多かった。

 社労士やフリーランスは健康であれば、ずっと働き続けることを前提にしている。だから元気を失わない。それに比べると、会社員は定年という大きな段差があるので、どうしても50代にもなれば『自分はロートルだ』と思いがちになる。長く同じ組織で働いているとやはりマンネリというか、トウが立ってくる面もあるのだろう。

 それでは、どうすればよいのか。定年や引退をなくしてしまえばよいのである。やはり定年前から準備をして、生涯現役であろうと努力することが一つの方策になろう。社労士会が、私に定年準備のテーマで講演を依頼したのは偶然ではないと思えるのだ。

 ■楠木新(くすのき・あらた) 1979年、京都大学法学部卒業後、生命保険会社に入社。50歳から勤務と並行して取材、執筆に取り組む。2015年3月、定年退職。現在、神戸松蔭女子学院大学教授。人事・キャリアコンサルタント。25万部を超えるベストセラーになった『定年後』(中公新書)など著書多数。19年2月に『会社に使われる人 会社を使う人』(角川新書)を出版。

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