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【定年後の居場所】女性運転手との会話で出てくる“タクシー事情” 爆睡するほど酔っての乗車はご法度

 大阪市内でタクシーに乗り込むと50歳前後と思しき女性の運転手だった。最近は時々、女性運転手に出会う。私はかつて『経理部は見ている。』(日経プレミアシリーズ)という本を書く時に、タクシーのレシートにはなぜ時刻が印字されていないのかを徹底して調べたことがある。

 タクシーに乗車するたびに話を聴いていた体験があって以降、タクシーの運転手と話すことが当たり前になっている。関西の運転手さんは良くしゃべってくれるので助かっている。

 彼女に「乗車する時間はいつも決まっているのですか?」と聞いてみると、「9時ごろから19時くらいまでです」と語り、会社員の勤務時間とそれほど違わないという。

 「タクシー運転手になって一番困ることは何ですか?」と聞くと、「酔った人です」という回答が返ってきた。昼間から酔っている人はいるのかと聞くと、夜勤明けの人もいるので少なくないそうだ。

 寝てしまわれると目的地が分からなくなるので、お客さんが乗り込んだときに行き場所をきちんと確認する。以前も走行中に後部座席で爆睡されて困ったことがある。どうしようもないときは交番に行って起こしてもらうのだそうだ。

 翌週に講演の仕事で札幌に行った。ホテルから札幌駅までタクシーに乗車すると、50代くらいの女性の運転手だった。2回続けてだったので、「女性の運転手さんは最近増えているのですか?」と聞くと、彼女が勤めている会社では5%くらいじゃないかと、少しいぶかしげに答えてくれた。

 彼女が乗車する時間は、毎朝7時から17時までで、やはり昼間だけの乗車だ。そこで「タクシー運転手をやっていて一番困ることは何ですか?」と聞くと、やはり「酔っぱらいのお客さんです」と大阪と同じ答えが返ってきた。

 特にススキノあたりの歓楽街近くを午前中に走っていると酔ったお客さんを乗せることが少なくない。初めの頃は、泥酔したお客さんを乗せて大変だったことがあるそうだ。後ろの席で深い眠りに入られると、どうしようもなくなる。お客さんの体を触ってはいけないルールになっているので揺り動かして起こすわけにもいかない。

 財布がなくなったとか、セクハラにあったなどの言いがかりを防ぐためだそうだ。やはり対応できない時は交番に連れて行くのだそうだ。酔った女性のお客さんが嘔吐する前に、すかさず紙袋を渡して車内を汚すことを防いだこともある。嘔吐物のある袋を自分に渡そうとするので、「それはお客さんが持って帰ってください」と諭したこともある。最近は歓楽街の近くを走るのを避けているそうだ。

 初めはぶっきらぼうな感じだったが、彼女は話すにつれてどんどん楽しく語り始めた。最近は、タクシー運転手が書いたお客さんとの面白話の本を読むことがあるそうだ。車内は笑いに包まれながら札幌駅に着いた。

 運転手さんに迷惑をかけないためにも、自分が交番に連れて行かれないためにもタクシーの車内で爆睡するまで飲まないように気をつけましょう。

 ■楠木新(くすのき・あらた) 1979年、京都大学法学部卒業後、生命保険会社に入社。50歳から勤務と並行して取材、執筆に取り組む。2015年3月、定年退職。現在、神戸松蔭女子学院大学教授。人事・キャリアコンサルタント。25万部を超えるベストセラーになった『定年後』(中公新書)など著書多数。19年2月に『会社に使われる人 会社を使う人』(角川新書)を出版。

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