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「リクナビ」内定辞退予測データ販売問題 悪質運用に就活生「怒りと不安」 個人情報を自由に扱う手法「不適切」の声も

 就職情報サイト「リクナビ」が就職活動の内定辞退予測データを企業に販売し、多くの学生が気付かないまま採用活動に使われていた。採用競争が激化しデータに対する企業ニーズが高まる一方、個人情報を巡るルール順守はおざなりにされた格好だ。就活生たちの怒りと不安は尋常ではない。

 ◆筒抜け

 「みんな悩みながら企業選びをしている。自分の動向が筒抜けになっていたと思うと怖い」。慶応大4年の女性(22)はリクナビに登録した際、信用して規約を読まなかったことを悔いていた。

 問題となったサービスは、内定辞退者が出ると採用計画が狂うという企業の悩みを解決するため、辞退しそうな学生を引き留める材料になるというのが売りだった。価格は400万~500万円。サイトの閲覧履歴などを基に辞退確率を5段階ではじき出す。合否判定には使わないとする同意書を取っていたというが、どこまで厳格に運用できていたのかは不明だ。

 ◆売り手市場

 2015年卒業の大学生から、就職活動は徐々に学生優位の「売り手市場」に転じたとされる。景気回復で企業の採用意欲が高まったためだ。内定を複数持つ学生は増え「人材の取り合い」が激しくなった。

 遠方の会社説明会に出向く、学生にこまめに連絡するなど採用担当者の負担は増した。注目を集めたのがデータの活用で、内定辞退確率が判断材料として重視されるようになった。大手電機メーカーで採用担当だった幹部は「精度の高いものなら利用を考えたかもしれない」と明かす。

 商機ととらえたのはリクナビに限らない。同業のマイナビは辞退可能性などを予測する分析ツールを16年から約80社に提供。担当者は、サイトの閲覧履歴は使っていないとし「個人情報の取り扱いには細心の注意を払っている」と説明する。

 ただ、厚生労働省は採用選考にあたって応募者の適性や能力のみを基準とするよう求めている。文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所の平野恵子所長は「辞退確率は適性と無関係だ」と採用の参考にすることを疑問視。「さまざまな情報を得やすくなった今だからこそ、学生の権利や個人情報の取り扱いを見直すべきだ」と訴える。

 ◆法規制なし

 サイトの閲覧や会員制交流サイト(SNS)の投稿といった膨大な情報を掛け合わせることで、個人の特性が知らないうちにつくりあげられ売買される。個人データの利用停止など歯止めをかける法規制は現状ない。

 現行の個人情報保護法でも、データを第三者に提供するには本人の同意が必要としている。リクナビの運営会社は、同意漏れを認めた7983人以外は「表現が伝わりにくかったが同意は得た」との立場だ。

 しかし、IT関連法制に詳しい弁護士の森亮二氏は「本人にとって不利な情報が知らないうちに渡された」とし、形式的な同意を得たとしてもプライバシー侵害に当たり無効だと指摘する。就職活動に必須のサイト利用と引き換えに同意を得て、個人情報を自由に扱う手法が不適切だとする声も少なくない。

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