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月13万円で生活できるか 賃金を上げられない日本企業が陥る悪循環 (1/3ページ)

 米フォード・モーターの創業者で、同社を世界的な企業に育てたヘンリー・フォードは、かつて「1日5ドル」という当時としては破格の賃金を払ったとして注目を浴びました。彼が取材を受けるたびに好んで繰り返したのが、次のコメントです。

 「われわれが考案した中で、最高の費用削減の手段の一つが、1日5ドルの賃金を決めたことだ」

 1日5ドルという水準は、当時のフォード社の社員にとって、自社が開発・製造したT型フォードを買える水準です。社員の賃金を上げたことで生産性は向上。T型フォードは近代自動車の原点となった伝説の車として世界に名を広めたのです。

 この話を日本の経営者たちはどう捉えるのでしょうか。今の日本では、フォードとは真逆の現象が起きています。

 残念な日本の経営者は人件費を減らすことばかりに傾注しています。1990年代に輸入した「成果主義」も、非正規雇用の増加も、目的はコストカットでしかなかったと言わざるを得ません。

 企業経営で一番の問題であり、経営者のとして最大のタブーが人件費カットであることは、歴史を振り返れば分かる。経営者が従業員1人当たりの人件費を抑えれば抑えるだけ、長期的に企業の競争力が低下し、費用対効果は悪くなります。

 なのに……。最低賃金を1000円にすることでさえ、「それじゃ会社がつぶれる」と騒ぎ立てる始末です。

■「時給901円」でも“普通の生活”はできない

 7月31日、厚生労働省は2019年度の最低賃金(時給)の目安を、全国平均で27円引き上げて、時給901円とする方針を決めました。賃金の高い東京都と神奈川県では初めて1000円を超えることになりますが、賃金が最も低い鹿児島県では787円です。

 政府は日本の最低賃金の上昇率に胸を張りますが、901円になっても欧州(英独仏)の約7割しかありません。

 最低賃金上昇は世界的な傾向で、ドイツでは、17年1月から最低時給を8.84ユーロ(当時のレートで約1170円)に、フランスでは19年1月から10.03ユーロ(約1197円)に、英国では最低賃金の額を20年までに平均賃金の6割に引き上げるとの目標を掲げ、19年8月からは8.21ポンド(約1059円)に軒並み上昇。シアトル、サンフランシスコ、ニューヨーク、ロサンゼルスといった米国の大都市でも、15ドル(約1650円)にまで、段階的に引き上げる法案が可決されています。

 日本では最低賃金の引き上げがもたらす負の側面がやたらとやり玉に挙げられたり、中小企業擁護論ばかりが取り沙汰されますが、901円になってもワーキングプアから脱するのは困難です。

 例えば、フルタイムで働いても月額15万1368円(901円×8時間×21日)です。ここから社会保険料等を差し引いた手取り額は、たったの13万円程度。13万円でどう生活しろというのでしょうか?

 しかも、最低賃金レベルでの働き手は年々増え、07年には最低賃金=719円に近い時給800円未満の人は7万2000人でしたが、17年には最低賃金=932円に近い時給1000円未満の人は27万5000人に増加。10年で4倍近くまで増えた計算になります(厚労省調べ)。

ITmedia ビジネスオンライン

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