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国際円買い投機の「実弾」は日銀が供給するのか 消費税率10%の引き上げによるデフレ圧力から…

 米中貿易戦争が激化し、景気の先行き不安が高まる中で、政府は10月には消費税率10%への引き上げによって、わざわざデフレ圧力を呼び込もうとしている。

 本欄の前回では消費税増税が引き起こすデフレが円高の元凶であり、円高はさらなるデフレ圧力をもたらすと論じた。円買いとは、言うまでもないがカネの取引であり、円相場を大きく動かすのはヘッジファンドなど米欧の投機勢力である。投機勢力はニューヨーク、ロンドンなど国際金融市場を本拠としている。では、質問。国際金融市場にはどこが資金を供給するか。答えは、日本である。

 グラフは、2012年12月のアベノミクス第1の矢、異次元緩和開始後の邦銀対外融資の激増ぶりを表している。世界の主要国中央銀行の合同機関である国際決済銀行(BIS)は各国の銀行による国際金融データを四半期ごとにまとめている。世界の2大国際金融センター、ニューヨーク、ロンドン市場を本拠とする米欧の金融機関が最大の貸し手になるはずだが、もはやそうではない。

 今年3月末のBIS加盟国の民間銀行による融資など対外信用供与(与信)残高を12年12月末時点と比較すると、全加盟国合計の与信増加額は1・55兆ドル、うち邦銀は9割近くの1・37兆ドルを占める。対照的に米国の銀行与信増は0・27兆ドルに過ぎず、英国となると0・54兆ドル減になっている。12月末の与信残高は米銀3・3兆ドル、英銀4・7兆ドル、邦銀3・01兆ドルとなっていたが、邦銀は14年後半に米銀を抜き、15年9月に英銀を上回った。

 日銀は異次元金融緩和政策によって、今年3月末、12年12月末に比べてドル換算で3兆ドル以上の資金を邦銀に流し込んだが、邦銀は多くを国際金融に回している。

 日本国内はデフレ圧力の蔓延(まんえん)のために、資金需要に乏しい国内融資に見切りを付け、海外向けに余剰資金を投入している。この資金はドルに転換され、ロンドンやニューヨークで運用される。国際金融市場で資金取引の主役は日本発の資金を調達、飲み込む米欧の大手金融機関や投資ファンドである。

 彼らは名目金利からインフレ率を差し引いた実質金利を重視する。インフレ率が高い国の通貨は金利を高くしないと、見向きもされない。国債は暴落する恐れがあるし、銀行などは貸し出そうとはしない。逆に物価が下がり続けるという予想が広がるデフレ局面では、金利を下げないとカネは動かない。

 実質金利が名目金利を上回る国の通貨は、下回る国の通貨よりも買われる。投機ファンドはデフレ・実質金利計算式に基づき、大掛かりな円買い投機をしかける機をうかがう。そうなると、円高は加速し、さらなるデフレを日本にもたらし、日本株を急落させ、経済はマイナス成長へという悪循環を生む。

 アベノミクスは日銀にカネを刷らせるが、それは巨大な円買い弾となって日本に降り注ぐのだ。(産経新聞特別記者・田村秀男)

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