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「羽田進入路」変更で動揺する城南エリア 高層住宅では騒音激しく

 国土交通省は羽田空港(東京都大田区)の国際線を増便するための2つの新しい進入ルートを、2020年3月29日から運用を始めると正式に発表した。

 これによって国際線の発着は年間3万9000回も増えるそうだ。ただ、この新しい進入ルートは、これまで民間機の空路がほとんど設定されていなかった都心の上空を活用することになる。

 具体的に言うと、西側ルートは山手線の渋谷、恵比寿、目黒、五反田各駅のほぼ上空を通過した後、京浜東北線大井町駅の真上を飛ぶ。東側ルートは西新宿、さらに品川駅のやや北側と天王洲の上空を通過する。

 新しい進入ルートの近辺では、今までになかった騒音に見舞われるのは確実だ。

 例えば、大井町駅前だと通過時の高度は約300メートル。機影は手が届きそうなほど近くに感じるに違いない。

 想定される騒音は平均で61デシベル、瞬間最大値は77デシベル。品川駅前だと高度は450メートルで、騒音は平均65デシベル、瞬間最大値は86デシベルになる。

 70デシベルになると、屋外での通常の会話が困難になる。80デシベルはパチンコ店内と同レベルとされる。

 ただ、この新しい2つのルートで上空を航空機が通過するのは「南風時の15時から19時」とされる。切り替え時間を含むので、実質的には3時間程度と国交省資料では説明されている。それでも日常生活の中に入り込んでくることは確かだ。

 懸念されるのは、このルート下にあるエリアの不動産の資産価値だ。毎日ではないにしろ、あるいは1回に3時間程度にしろ、家の窓を開けていれば屋内での会話もままならなくなる可能性が高い。

 そういうマンションや戸建て住宅の購入は避けようと考える人が一定割合いても不思議ではなく、住宅への需要は確実に減退する。住宅を借りる場合でも「そういう騒音が発生するところには住みたくない」と敬遠する人もいるだろう。

 マンションのような集合住宅で住民同士がトラブルになる場合、最も多い原因は騒音である。騒音に対して敏感な人は案外多いものだ。

 特にタワーマンションのような高層住宅になると、高い階の住まいほど騒音が激しくなることが予想される。例えば33階なら、地上よりも約100メートル高い。

 騒音の感じ方は人それぞれで、常に騒音が発生する幹線道路沿いの住宅でも、平気で住める人は一定割合存在する。

 新しいルートの下の物件や住宅の資産価値が、いきなり何割も下落するようなことはないだろう。だが、1つの大きなハンディキャップを背負うことも確かだ。

 新ルートの運用は、まだ半年以上も先の話ではあるが、こういうことは実際にそうなってみないと、どれほどの影響が生じるのか分からない。このエリアで物件の購入を検討している場合、それなりに注意を払うべき問題ではある。

 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案・評論の現場に30年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。

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