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米国「長短金利」逆転はどのような悪材料なのか 見通しの悪化をもたらした米中貿易摩擦

 先週は内外の株価が大きく下落した。古くから日本の株価は米国株価の動向に強い影響を受けているが、近年その連動性がますます強化されている。

 率直なところ、1990年代のバブル崩壊前の日本の株価形成には、海外要因の影響もあったが、国内要因の影響も大きくあって、日本株が世界に占める相対的な時価総額も大きく、「先進国市場的な株価形成」だといえた。だが、近年の日本の株価形成は大半が海外要因で海外株価に連動して動く「新興国市場的な株価形成」に「後退」した印象を受ける。

 米国をはじめとする世界の投資家が国際分散投資を拡大して世界の資本市場の連動性が強化されていることと、日本の経済および金融証券業の相対的退潮が相まって生じた現象だろう。

 日本人として残念だと思う向きがあるかもしれないが、今や世界の株式に手軽にかつ低コストに投資できるので、個人投資家は嘆くに及ばない。

 さて、先週の米国の株価下落の大きな原因として、長短金利の逆転が挙げられている。具体的には、10年物の米国債の利回りが、2年物の米国債の利回りを下回るようになった。「長短の金利逆転は、不景気に向かうサインだ」と解説する向きもあるが、どう考えたらいいのだろうか。

 長期金利は、景気の見通しが良くてビジネスへの投資見込みが良好な場合に上昇しやすく、これが下落するのは、景気の見通しが悪化したときだという可能性はある。

 また、長期金利は、将来の短期金利の見通しを反映して形成される一面も持っている。米連邦準備制度理事会(FRB)は今年に入って政策金利の引き下げに転じたが、2年、10年両方の金利がいずれも将来の政策金利の引き下げを読みつつ、より長期の金利の方が先の金利水準全体の低下を織り込んで先んじて大きく下落しているという見方もできる。

 ただし、長短金利共に、それ自体の下落は、他の条件に変化がなければ景気や株価にプラスの要因なのであり、長短金利の下落あるいは長短金利の逆転そのものが景気悪化の原因になるわけではない。長短金利の低下は、経済見通し悪化の原因ではなく結果なのだ。

 見通しの悪化をもたらした主因は米中の貿易摩擦問題だろうから、米国のトランプ政権は、今後、大統領選挙への影響をにらみつつ、「中国叩き」と「景気・株価」のバランスを取ることになるのだろう。

 一方、米金利の低下は円高要因であり、円高は日本の景気にもデフレからの脱却にもマイナス材料だ。投資家や経済人にとっては、心配の絶えない時期がしばらく続く。

 安倍晋三政権は10月の消費増税について「まずい時期に上げた」と近い将来後悔することになりそうだ。巡り合わせが悪い。(経済評論家・山崎元)

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