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年金はなくならないが「小さくなる」覚悟を 生活の参考にできない「所得代替率」

 公的年金の5年に1度の財政検証の結果が8月27日に発表された。結果に対する反応は多様だ。

 翌日の朝刊の全国紙が1面トップで報じた際の見出しを、幾つかご紹介しよう。

 読売新聞は「年金現役収入の5割維持」と掲げた。政府が望ましいと見る経済前提の下で、将来の年金支給額が現役世代の可処分所得に占める比率である所得代替率が50%を維持する見通しであることを伝えた。今年度の所得代替率は61・7%であり、今後低下するが50%以上が確保できることを強調した。

 朝日新聞は同じ事実を「年金水準見通し改善せず」「30年後に2割減」と伝えた。前回の財政検証から改善していないことを強調したが、よく考えると「2割減」なら所得代替率50%を維持している。

 日本経済新聞はいささかひねった。「年金、68歳まで働く必要 いま20歳が現状水準もらうには」という見出しを打った。年金は受給開始を繰り下げると、ひと月あたり0・7%受取額を増やせるが、現在20歳の人が現在65歳の人と同じだけの年金額をもらうには、68歳9カ月まで受給開始を遅らせる必要があると計算した。

 経済成長率が0・9%増、実質賃金が1・6%も毎年上がる前提でも、所得代替率は51・9%まで下がる。労働人口が減る日本が0・9%ずつ成長するのは大変だろうし、今後、労働が機械と人工知能(AI)に置き換わるなかで成長率を超える実質賃金の伸長があるものなのかも疑わしい。良いシナリオが実現する可能性を否定はしないが、これを前提とするのは甘かろう。

 ところで、この「所得代替率」は法律で定義されており検証自体が誤りではないのだが、生活の参考にはできない。

 実は、2016年10月に衆議院厚労委員会で長妻昭議員が当時の塩崎恭久厚労相に質問して明らかになったのだが、現行の所得代替率は、年金支給額は税や介護保険等の社会保険料を差し引かない「名目額」なのに、現役世代の所得は税金や社会保険料を差し引いた「手取額」で計算された、いびつな代物なのだ。

 当時の新聞記事には、13年の所得代替率が62・6%だが、両方を手取額で計算すると53・9%だとある。

 「手取り」で考える場合、所得代替率は今回の検証数値の0・86倍程度に悪化する。今や少数派の専業主婦世帯を「モデル世帯」としていることとともに、公的年金の将来支給額は甘く見ない方がいい。若い世代は、モデル世帯であっても将来もらえる年金額は現役世代の3割くらいだと覚悟しておくべきだろう。公的年金はなくならないが、楽観的なケースでもかなり縮むと考えておこう。

 長く働け!という日経の見出しが、アドバイスとしては正しいようだ。(経済評論家・山崎元)

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