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令和時代の不動産取引は「手放す時を考えて買う」 粗大ゴミ以上にたちが悪い「負動産」とは

 買い手や借り手がつかない不動産を「負動産」と呼ぶ。高齢化社会と人口減少に伴い競争力のない物件がゴロゴロ、気づけば「負動産」だらけというのがいまの日本だ。これから物件を買う、あるいは買おうとしている読者に、夕刊フジで「マンション業界の秘密」(金曜)を連載する住宅ジャーナリスト、榊淳司氏がアドバイス。「手放す時を考えて買う」。これがポイントだ。

 住宅を購入しようとする場合、何を第一に考えなければいけないのか。東京や大阪といった大きな街の中心に近い場所に住んでいると、気付かないことがある。だが、ちょっと都心を離れたり、地方に行くと街の情景が10年前とはガラリと変わっていることに気づかされる。

 空き家と思われる家屋がやたらと目につくのだ。駅に近い場所でも、閉店してから20年以上は経過したと思われる小規模商店が並ぶ。いわゆる「シャッター街」で、かつては2階に家族が住み、1階は店舗だったのだろう。

 そんな家屋の多くは、資産価値がないに等しい。10万円程度で売り出しても、買い手は付かない。街の中心から離れた木造一戸建ての古い住宅にも値段が付かないような物件が少なくない。既存の住宅の多くは、資産価値が失われつつあると言ってもいい。

 何年か前から、さまざまなメディアで「実家の始末」というテーマが扱われるようになった。これが20年前だったら、人々はこういうことに悩まなかった。どんな住宅でも、安くすれば買い手が付いた。今は買い手さえつかないから困る。

 この現実を踏まえ、これから住宅を購入する場合は、何よりもその住宅の出口を考えることだ。購入した物は、いつか手放す時がくる。なかには「一生住むから出口なんて不要」という人もいるだろうが、どんな人でも寿命がある。住宅はあの世まで持ってはいけない。

 その住宅を相続する人がいるなら、そこを考える必要もある。相続した人が喜ぶ住宅なのか、困り果てる物件なのか。

 資産価値のある住宅なら大喜びだ。例えば、築40年のマンションでも東京都港区や大阪市中央区に立地していれば、相続した人も喜んでくれる。自分で住んでもいい。もちろん売れるし、貸せる。

 だが、ちょっと郊外の、駅から離れた一戸建て住宅なら困る。マンションでも管理状態が悪いと資産評価が低い。そういう物件を残された人は相当苦しむだろう。

 今の時代、資産価値が評価されない住宅は、一戸建てでもマンションでも、粗大ゴミ以上に始末が悪い。

 今後、時代が逆回転して日本のほとんどの不動産に何らかの資産価値が付くようになるとは思えない。であるからには、これからの住宅購入には出口戦略を考えることが不可欠。手放したいときに簡単に売り手が見つかるかという点だ。

 「負動産」が激増するなか、行政側も相続制度を柔軟化して、不動産を分離放棄できる仕組みをなるべく早く整備すべきだろう。そうしないと、日本各地の風景は加速度的に荒廃する。

 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案・評論の現場に30年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。

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