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災害時「休んでよし」のリスク管理 個々の社員が自分で“適切な意思決定”できるルールを

 9月9日に台風15号が首都圏を直撃した。多くの鉄道が事前に前日深夜から当日午前中にかけて運休を決めていたが、線路上の倒木などにより運転再開に時間がかかった路線も少なくなかった。この状況下、多くの駅が通勤客で混雑し、中には駅の外にまで長蛇の列ができた場所もあった。

 通勤客当人にも、また混雑を眺めた人にも、「台風なのにここまでして会社に行かなければならないのか」という疑問を持った向きが多くいた。中には、通勤客を会社に強度に従属する「社畜」と揶揄(やゆ)する声もあった。

 さて、台風上陸のように交通に著しい不便が予想されるなど、通勤に多大な苦労が予想される場合に、それでも出社の努力をするべきなのか。

 結論を言うと、ほぼ全ての場合にあって、暴風雨の最中に通勤したり、通勤のために駅で長時間並んだりする状況は、会社と本人のいずれか又は両方に問題があると考えるべきだ。

 まず、社会のインフラ維持に関わる仕事や、医療、災害時の安全確保など、必ず出勤しなければならない仕事の場合、台風直撃の前から仕事場の近くにいるべきであり、駅で長時間電車待ちをしている時点で会社も本人もビジネス失格だ。

 また、社会的な重要性が明らかな仕事でなくとも、場合ごとに個々の社員の出勤の必要の有無や必要な場合の出勤確保の方法などが、あらかじめ整理されているのでなければ、ビジネスの危機管理として不十分だ。誰かが判断し連絡する形よりも、個々の社員が自分で適切な意思決定ができるルールを日頃から準備しておくことが望ましい。

 通常の仕事であれば、半日や一日遅れても取り戻すことができるだろうし、「テレワーク」の態勢が整っていなくとも、社員同士の連絡手段があれば、多くの仕事は進められる。

 物販や直接の対人的なサービス業であっても、台風接近や交通の混乱時には、顧客も外出や移動が不便になる。休むことによる利益機会喪失のコストは小さく、同時に出勤にかける時間や肉体的な疲労など各種のコストは大きいのだから、「休んでよし」と判断できる場合が多いはずだ。

 取引先など相手のある仕事の場合でも、相手と連絡を取り、仕事のスケジュールを変える交渉ができないのでは問題だ。

 いずれも初歩的なリスク管理の問題だ。うまく対応できないとすると、会社にも個々の社員にも能力上問題がある。

 それでも長時間駅に並ぶビジネスパーソンを「社畜」と呼ぶのはやめておこう。せっかく「自分が会社に必要とされている人材だ」という陶然たる満足感に浸っているのだから、ケチをつけるのは不親切だし野暮というものだろう。(経済評論家・山崎元)

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