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【ぴいぷる】バイオリニスト・三浦文彰、弾き継ぐ“クラシック愛” (1/2ページ)

 不穏な旋律。タッチこそ軽やかだが、何かを予感させる調べにいきなり引き込まれ、気づけば聴き入っている。

 NHK大河ドラマ『真田丸』のメーンテーマ。そのバイオリン・ソロを担当した。

 「オーケストラでもバイオリンから始まる曲は少ないので、インパクトを大事にしました。作曲した服部隆之さんに『戦に向かう、土臭い感じ』というイメージをもらって」

 レコーディングは指揮者の下野竜也さんの準備が完璧で、「4回通しただけでした」と振り返る。

 コンサートは常に満席。人気、実力を兼ね備えるバイオリニストが今度は、ウィーン国立バレエ団の芸術監督、マニュエル・ルグリ氏を加えた一流バレエダンサーたちと共演する。ルグリ氏は、パリ・オペラ座バレエ団での伝説のエトワール(ダンサーの最高位)だ。

 「バレエは、オーケストラや録音された音楽で踊ることが多いけど、今回はバイオリンとピアノだけで、演奏する僕らの目の前を踊る。僕にとってもお客さんにとっても貴重な体験です。ピアニストの田村響さんと僕のソロもあり、音楽メーンでも楽しめます」

 「踊りが素晴らしく見とれてしまう」ことがやや心配(?)だが、同様の公演は経験済み。「どこで音を切るか、どこまで音を伸ばすか。タイミングの難しさは想像がつきます」と心を躍らす。

 両親もバイオリニストという音楽一家。10歳の時、20世紀の巨匠が映像で蘇るDVD『アート・オブ・ヴァイオリン』を見て、大好きだった野球ではなく「バイオリニストになる」と決意した。

 以後、毎日3時間、弾き続けた。

 「中学2年の時、母とケンカして『家出する』と飛び出したけど、1時間後に『バイオリン忘れた』って帰って。それだけ、当たり前の存在でした」

 ただ、中学時代は塾にも通い、遊ぶ時間がなかったため、「反抗期になって夜遊びして…。中3からの一時期はやんちゃでした」と苦笑いする。

 大きな転機は16歳にやってきた。世界最難関とされるドイツのハノーファー国際コンクールで、史上最年少で優勝。実はそれまで受けたコンクールは3回のみで、全て2位だった。

 「小学校のときに国内で2回、後はフランスで13歳の時に受けたコンクール。3回中2回の1位が1つ年下の郷古廉くんで、僕は“2位の男”。音楽は競うもんじゃないと思っていたから、コンクールは嫌いだったけど、1位じゃないと意味がないとも感じました」

 悔しさが芽生え始め、何気なく海外のコンクールを検索。ふと目にとまったのがハノーファーだった。

 「英語が分からず、応募要項をネットの翻訳機能で見たら『世界一 気前のいいコンクール』とあって、賞金が当時の世界一で5万ユーロ(現在のレートで約620万円)。それじゃ受けよって(笑)。いやいや、それはウソですけど」

 マネジメント会社と契約し、国内外の管弦楽団と共演、何度も大舞台を経験した。それでも「コンサートの1時間前はプレッシャーで地獄」と言う。重圧から解放される瞬間は…。

 「食べるのと飲むことですね。いろんな場所に行ける仕事なので、隣の席に運ばれた料理がうまそうで『これ何?』って聞いて仲良くなったりするのも楽しみです」

 その国の文化を知るためには「まずは食?」と問うと、「絶対にそう」と即答した。

 日本でもクラシックが、もっと身近になってほしい-。これが切なる願い。

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