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【ぴいぷる】ジャッキー・ウー監督、孤独感知るからこそ「心君、冨士さんの味方に」 映画『ばあばは、だいじょうぶ』公開 (1/2ページ)

 昨年、「ミラノ国際映画祭2018」で主演の寺田心(10)が外国映画最優秀主演男優賞を、自身が最優秀監督賞を射止めたことで話題となった映画『ばあばは、だいじょうぶ』(10日公開)は、10万部を超えるベストセラー絵本(楠章子原作)をモチーフにした認知症の祖母と孫の交流を描いた感動作だ。

 映画では優しいばあばが同じ質問を繰り返し、好きな編み物もできなくなってしまう姿を見て、「ばあばは、忘れてしまう病気」なんだと認識する孫、動揺する長男夫婦と嫁いだ娘たち。やがてばあばは、夏の暑い日に忽然と家から姿を消してしまう。

 「日本では手に負えなくなった身内を、だれが面倒を見て、施設に入れるかなど葛藤がありますが、海外の医療先進国では認知症の度合いで入所する施設のランクが決まっている。そこに家族の意向や葛藤は無い。この作品でもう一度父母、祖父母のことを見直してほしいという思いで取りあげた。このメッセージを海外に向け発信したいという意図もありました」

 主役の寺田はオーディションに挑みこの役を手に入れた。「ばあばを捜すシーンで心君は大泣きしたんです。そこで僕はこう言った。『泣いてもいいけど、男の子が大事なばあばを捜すんだから、前を向いて捜しなさい。これまでと違う心君を出していこう』って」

 そのため台本の内容を変更し、一人前の俳優として相対した。「礼儀正しくて、台本の解釈も的確。セリフも完全に入っている。でも子供らしく、差し入れがあると、楽屋で宿題をしていても飛んでくる(笑)」

 海外を意識しアフターエモーション(感情を保つ)の指導も行った。

 「観客は一度字幕に目をやって、それから役者の表情に視線を戻す。だから、エモーションをつけ長めに演技してほしいと注文しました。場面から2拍後にセリフを言うという間の取り方も指示しました」

 喜びを感じたのは「心君は当初、『夢は役者じゃないかも?』と口にしていたのに、終盤では、『海外に通じる役者になりたい』と言い出したこと」と明かす。

 ばあば役にはチャーミングな女優、冨士眞奈美に白羽の矢を立てた。認知症とふと正気に戻る狭間で揺れる心理状態を描くシーンで、カーテンに隠れ冨士の精神状態をコントロールした。

 「1分以上の長撮りをします。まばたきはしないでくださいと断わり、僕はささやくように言葉を発した。『死んだお父さんがそばにいますよ』『孫が貴女のことをキライになっています。さあ、どうします?』。冨士さんはどんどん表情を変えその世界に入った。こういう手法は僕にしかできないと自負しています」

 中国人2世の父と日本人の母の間に生まれ、人種と文化の入り混じる横浜中華街で育った。

 「日本国籍なのに子供の頃から差別されてきた。小学校の先生に『君は純粋な日本人じゃないから、100点はやれない』と言われ、夏祭りで盆踊りを踊っていると、お前はこの列で踊るなと弾き飛ばされた。父と日中戦の男子バレーボールの試合を見ていて、日本が逆転勝ちしたので『バンザイ!』と叫ぶと、父は怒って家から出ていった。俺はいったい、どこを応援すればいいんだと…」

 自身のアイデンティティーがどの国にあるのか分らず、「気持ちを譲りながら生きてきた」。しかしあるとき、「人の価値観に振り回されるのではなく、個性を大事に素直に生きていこうという境地に至った」という。

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