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【ぴいぷる】「舟を編む」で映画賞総なめ 映画監督・石井裕也 「外国で撮ることで自分が知らない日本の魅力や欠点が見えてくる」 (1/2ページ)

 映画監督になるための登竜門「ぴあフィルムフェスティバル」(PFF)のグランプリを24歳で受賞後、初の商業映画「川の底からこんにちは」を引っさげ、27歳でベルリン国際映画祭で鮮烈デビュー。30歳にして日本最高峰の日本アカデミー賞最優秀作品賞と最優秀監督賞を獲得した若き鬼才だ。

 今、邦画界で最も期待される実力派の注目の新作「町田くんの世界」が完成し、6月7日から全国で封切られる。

 「人を愛する気持ちとは何だろうか。実は本当は誰も、人を好きになること、愛することについて明確に答えることなどできないのではないか。普通なら恥ずかしくて口にできない、そんな“愛”を描くために真剣に向き合って撮りました」

 同名の人気少女漫画が原作。初めて少女漫画の映像化に挑んだが、「まさか自分が少女漫画を手掛けるとは…。でも逆に振り切れた。冒険的で自由に撮ることができました」と自信をのぞかせた。

 5人兄弟の長男、町田一(細田佳央太)が主人公。勉強も運動も苦手だが、人に親切な優しい高校生だ。ある日、授業中にけがをし、保健室に行くと、授業をさぼっていた同級生、猪原奈々(関水渚)と出会う。保健の先生が不在で、奈々に手当てをしてもらい、2人は意識し合う。だが、それが恋とは分からず、2人は戸惑い始める…。

 高校生役の2人には新人を起用した。1000人を超えるオーディションの中から細田、関水を監督自ら選び出した。

 「起用の理由? 2人とも僕の分身となって全力で演じてくれると確信したから。2人に賭けてみようと思いました」

 デジタル全盛の時代に、あえて35ミリフィルムで撮影した。映画監督を目指し、大阪芸術大学で修業した。「デジタル撮影が当たり前」の時代に育ったため、35ミリでの撮影は今回が実は2本目だ。1本目は、日本アカデミー賞を総なめにした「舟を編む」だった。

 辞書を編纂する松田龍平演じる主人公の編集部員たちの姿を描いた傑作。1冊の辞書完成までに数十年を費やす。その途中、辞書作りに関わる者が何人も死んでいくという壮絶な世界を丁寧に描くためには、「35ミリフィルムで撮るのが監督としての礼儀だと思いました」とその理由を打ち明けた。

 では、35ミリ撮影の2本目に、なぜ今作を選んだのか。

 「細田君、関水さんの2人は全人格、青春のすべてを懸けて撮影に臨んでくれた。そんな2人の大切なデビュー作を35ミリフィルムの中に収めてあげたかった。それが監督としての2人への敬意、礼儀だと思ったから」

 主演2人は新人だが、脇役には主演級をそろえた。佐藤浩市に松嶋菜々子、池松壮亮、前田敦子、高畑充希…と蒼々たる顔ぶれだ。

 佐藤は「役者としてやっぱりフィルムが回っているのはうれしかった」と現場を振り返り、35ミリで撮影に臨む監督の意図をくみ取っていた。

 高校まで埼玉で育ち、大阪芸術大学へ進学し、“東京への違和感”を初めて覚えた。「人も情報もあふれ過ぎている東京は異常だ」と感じながら撮影したのが、昨年のアジア・フィルム・アワードで監督賞を受賞した「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」だった。

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