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【ぴいぷる】映画監督・黒沢清、挑み続ける創作魂…「まだ私には代表作がない」 俳優もこなす律儀さ「断れない監督がいる」と照れ笑い (1/2ページ)

 ■前田敦子を主演に抜擢

 「ニューヨークで地下鉄を乗り間違えたり、オランダの知らない街で迷子になったり…。この映画でヒロインが経験することは私が実際に体験したことばかりです」

 14日に封切られる映画「旅のおわり世界のはじまり」を、ウズベキスタン共和国で撮影した国際派監督は苦笑しながら、こう打ち明けた。

 ヒロインを演じる元AKB48のエース、前田敦子が劇中で遭遇する出来事の多くは、自らの海外での“失敗談”だ。

 海外の映画祭で特集上映が組まれる日本を代表する国際派。これまで、仏・ベルギー・日本合作「ダゲレオタイプの女」、日韓合作「LOFT ロフト」など数々の合作を手掛けているので、「合作は手慣れたもの?」と思いきや、「ウズベキスタンは行ったこともなく、知識や情報もなかったので、大変でした」と苦笑した。

 バラエティー番組のレポーター、葉子(前田)は、シルクロードの湖に棲むという幻の怪魚を取材するため、ウズベキスタンを訪れていた。撮影が終わると、毎日、葉子は一人で街へ出かけるが、道に迷ったり、危険な目に遭遇したり。仕事や人生に悩み、心の居場所を失っていた葉子は旅の途中、変わり始める。

 「2年前、ウズベキスタンで合作映画を撮らないかと誘われ、すぐに引き受けました。シルクロードには興味があったし、とにかく一度行ってみたかったから」

 役所広司主演の「ドッペルゲンガー」、「叫」などホラーを得意とする一方、一昨年、初めてSF「散歩する侵略者」を撮るなど幅広いジャンルに挑み続け、新作でも新たな試みを敢行している。

 「現地で前田さんに思うままに街を歩いてもらっています。脚本はありますが、彼女が初めて訪れた土地で出会う驚きや戸惑いは、すべて本物なんです」と語るように、ドキュメンタリー映画のような展開は、これまで見てきた黒沢作品とは異質で一線を画している。

 数々の合作を手掛けてきた一方、「実現しなかった企画も少なくない」と明かす。

 香港のスター、トニー・レオン主演の日中合作映画「一九〇五」は脚本も完成していたが、クランクイン前の2013年2月、製作中止に。同作では女優活動を始めたばかりの前田の出演も決まっており、レオンとの共演が、当時、話題となった。

 新作のヒロインを選ぶ際、「すぐに前田敦子の顔が浮かんだ」と言う。日中合作映画の製作中止で、がっかりさせてしまった彼女のことを、ずっと忘れていなかったのだ。

 ■俳優もこなす律義さ

 そんな律義で心優しい重鎮監督には、俳優界の中にもファンが多い。今作では、黒沢ファンを自認する加瀬亮、染谷将太、柄本時生ら実力派が前田の脇を固めている。

 監督デビューから36年のキャリアを築いてきたが、「まだまだ撮りたい映画が山ほどある」と言い、そのためには「どんな依頼も断りたくない。フットワークの軽い監督でいたい」と続けた。

 こんな旺盛な創作意欲、映画と向き合う真摯な姿勢は“俳優活動”にも現れ、これまで数多くの映画に出演している。

 「依頼を断れない監督がいるからですよ」と照れ臭そうに笑う。盟友、手塚眞監督がその一人だ。

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