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あふれる刺激的なセックスシーン、ただれた関係が不思議と純愛に 荒井晴彦監督の腕が冴えわたる『火口のふたり』23日公開

 23日公開の映画『火口のふたり』は、タイトルから火口に飛び込んで無理心中でもする恋人たちの悲恋話かと思ってしまう。が、中身はとんでもない堂々のR18映画だ。

 あふれるセックスシーンがとても刺激的。といっても煽情的一辺倒に撮ってはいない。なぜならそれが物語のメインではなく、あくまでもかなわぬ恋の純愛が核になっているからだ。

 本作は直木賞作家、白石一文の原作であり、初の映画化となったもの。むしろエロティシズムを描くことでは右に出るものがいない脚本家、荒井晴彦監督の腕の冴えが見どころだろう。

 主演の柄本佑と瀧内公美が“身体”で語る絡みの世界がすべて。たった2人しか出ていないのに1時間55分を飽きさせないのは、それだけセックスの中身が充実していると感じられるからか。

 故郷の実家に帰ってきた賢治(柄本)は、いとこの直子(瀧内)が10日後に結婚すると父から教えられる。

 久しぶりに顔を合わせたふたりは仲のよかった昔へと戻ってゆく。持ちだしたアルバムには、赤裸々な白黒写真が残されていた。富士山の火口を真上から写した写真の上で一糸まとわぬ姿のふたりがあった。これは直子の計算だったのか。禁断の実がはじける。

 結婚直前だから「今日だけ、あの頃にもどってみない?」と激しく絡むふたり。だが5日後、自衛隊勤務の婚約者の急な任務のため結婚式はドタキャン。あっけなく結婚は解消されてしまった。

 一度だけのはずが、それで理性のタガが外れてしまう。繁華街の暗い路地で獣のようにつながったこともあった。「お前はそんな変態のようなセックスが好きなのか」と賢治に聞かれ「いいえ、賢ちゃんが好きだったからよ」と答える直子。「気持ちいい」とまたセックスの繰り返し。ただれた関係のようだが、不思議と純粋な心のつながりだけが伝わってくる。

 ここには生と性が生々しく、死の匂いも漂わせながら切り取られているだけだ。『新宿乱れ街 いくまで待って』で脚本を担当した荒井監督が再び銀幕に刻印したのは、単なる欲望ではないと断言しよう。(望月苑巳)

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