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《zak女の雄叫び お題は「良かったこと」》夏バテ救った映画

 当コラム9月のお題「良かったこと」を前に、トップバッターにも関わらず何も思い浮かばない。小2の息子の夏休み、プールだ旅行だ宿題だと奔走した記者は、怒鳴り疲れて身も心も完全に夏バテ。楽しい思い出の一つも披露できない抜け殻状態になっていた。

 そんな8月の暑い日、試写会の招待状が届いていたのを思い出し、フラフラと出席したらこれが当たりだった。

 草なぎ剛さん主演、市井昌秀さん監督・脚本の「台風家族」。描かれるのは10年ぶりに実家に戻ってきた4人きょうだいの夏の一日だ。帰省は銀行で2000万円を強盗したまま行方不明になった両親の葬儀をするためだったが、本当の目的は財産分与にあった-。

 きょうだいは汗だくになってガチバトルを繰り広げる。草なぎさんがカネに汚い長男・小鉄役を“クズ感”たっぷりに演じ、きょうだいから「ゲスね」「ほんとクズだな!」などとなじられるところが秀逸だ。ぶつかり合ううちに、小鉄や家族、それぞれの本当の思いが明らかになる。

 見ながら、笑って泣いて「親孝行したい」と思い、さらに夏中あんなにわずらわしいと思った子供たちに「もう少しやさしくしてやらなきゃ」などと思ってしまった。

 実はこの映画、強制性交罪で起訴された俳優の新井浩文被告が出演している。そのため公開が一旦延期になったが、公開を望む多くの声に、配給・制作したキノフィルムズが今月6日から26日まで3週間限定で全国公開することを決めた。

 同社の武部由実子社長は8月、ホームページで、公開を望む多数の声が寄せられた一方、「公開などすべきではない」という反対意見も多く届いたことを明かしたうえで、「『事件と作品は別』という観点から公開に踏み切ることに決めた」と発表。また、その中で、「スタッフとキャストが積み上げフィルムに焼き付けた“一瞬、一瞬という時間”を大切にしたい」として、本編の再編集を行っていないことも説明している。

 その意味は映画を見れば分かる。限られた空間の中で感情をぶつけ合う、その場限りの舞台を見るような映画なのだ。だれかをカットすれば成り立たないし、撮り直せば同じ熱量が焼き付けられるか分からない。唯一無二の作品を世に出すという覚悟を感じた。

 残念ながら犯罪に手を染める芸能人は後を絶たない。子供たちの憧れを集める仕事だけに、簡単に復帰できてはならないと思う。上映にはこれからも賛否があるだろう。一概に「良かったこと」として紹介することはできないが、少なくとも夏バテの記者を救い出し、家族へのやさしい気持ちを取り戻させてくれたこの映画に、個人として感謝することは許してほしい。(ゆ)

 【zak女の雄叫び】取材や日常…。女性記者21人が月ごとのキーワードで本音を綴るリレーコラムです。9月のお題は「良かったこと」です。

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