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【サム・ペキンパー監督 バイオレンスの系譜】ボブ・ディラン出演も出番大幅に削られ…サントラ「天国への扉」は名曲に 「ビリー・ザ・キッド 21歳の生涯」(1973年)

  アメリカ人ならずともビリー・ザ・キッド(本名=ウイリアム・H・ボニー)の名前は知っている。これまでに何度も映画の主人公となってきた伝説の人物だ。

 この作品は回想シーンから始まる。

 1908年、牧場主のパット・ギャレット(ジェームズ・コバーン)が土地売買のトラブルから相手に撃ち殺される。パットの脳裏にかつての出来事が思い出される。それはかつて自分が撃ち殺したビリー・ザ・キッド(クリス・クリストファーソン)のことだった。

 ビリーとパットは親友だった。だがパットは保安官に、ビリーはお尋ね者に。追う者と追われる者に立場が分かれた。

 1881年、ニューメキシコ州フォートサムナー。ビリーは自分のいる場所はここしかないと舞い戻る。それを知ったパットたちはビリーを包囲する。パットがビリーを撃ち殺した後、鏡の中に映っている自分に発砲する意味深なシーン。

 実際のキッドは身長150センチぐらいだったというから長身のクリスではしっくりこないと、最初はアル・パチーノやダスティン・ホフマンの名が挙がったという。

 本作では3人の歌手が出演している。1人はキッド役のクリス・クリストファーソン。彼はカントリー系のフォーク歌手だ。そしてこの映画での共演がきっかけでクリスと結婚したのが、同じくカントリー系歌手のリタ・クーリッジ。大ヒットした「ハイヤー&ハイヤー」をご存じの方も多いだろう。

 そして言わずと知れた大歌手、ボブ・ディランが出演している。彼はペキンパー作品に出られると知って喜び、奥さんのサラも伴ってメキシコの撮影現場にまで来たという。だが現場で見たのは尊敬する監督の酒乱でメチャクチャな姿。撮影はいつ終わるか分からないありさまだったという。

 揚げ句は制作会社のMGMと衝突してフィルムの編集権を取り上げられてしまった。そのためタイトルロールではコバーン、クリストファーソンに次ぐ3番目にクレジットされているにもかかわらず出番がかなり削られてしまった。見どころはナイフ投げのシーンくらいか。

 だがサントラにも収められた「天国への扉」は名曲として親しまれている。この曲がなかったらまた違った映画になっていたかもしれない。=おわり(望月苑巳)

 ■サム・ペキンパー 映画監督。1925年2月21日生まれ、米カリフォルニア州出身。55年、テレビドラマ『ガンスモーク』で脚本家、監督デビュー。映画の監督デビューは『荒野のガンマン』(61年)。84年12月28日、心不全のため59歳で死去。

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