【エンタなう】“分断”へのアイロニーを込めた至高の音楽劇  映画『アメリカン・ユートピア』 - zakzak:夕刊フジ公式サイト

記事詳細

“分断”へのアイロニーを込めた至高の音楽劇  映画『アメリカン・ユートピア』

 コロナ禍でブロードウェイの再演が幻となってしまったショーをスパイク・リー監督が丸ごと映画化した『アメリカン・ユートピア』(公開中)。元トーキング・ヘッズのデイヴィッド・バーンと、11人の仲間によるマーチング・バンドが歌い、叩き、奏で、踊る。タイトル通り、アメリカをユートピアにするための処方箋が、アイロニーを込めた明るい至高の音楽として表現される。

 間口が狭く、客席が近い舞台。バーンが脳の模型を手に現れ、それぞれの部位が何を司るかを、歌いはじめる。やがて、ダンサーや楽器を手にした多国籍の仲間が合流。みなグレーのスーツ姿だが、客席には徐々にカラフルなワールドミュージックが充満してゆく。

 赤ちゃんは、生まれてしばらくすると、脳が著しく発達して、神経細胞同士を結ぶシナプスが人生で最大の量となる。ところが、大人になるにつれ下降線をたどる。バーンは、全21曲の合間に、そんな話を挟みながら、世の中のさまざまな“分断”を仲間や客席と共有する音楽を通じて、再接続しようと試みる。

 タイトルロゴのUTOPIAが逆さなのは、現状への皮肉なのだろう。70を前にバーンのとんがったパンク気質は健在で、完成度の高い音楽とともに、客席に向かって「投票へ行こう」と呼びかける。そこに政治的な押しつけがましさはなく、洒脱にスマートにロック魂をぶつける。

 終演後、NYの街を自転車で颯爽と帰る後ろ姿が実にカッコイイ。(中本裕己)

関連ニュース

アクセスランキング

×