未熟なアイドルを主演にヒット作連発…本当の職人だった映画監督・澤井信一郎さんを偲ぶ - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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未熟なアイドルを主演にヒット作連発…本当の職人だった映画監督・澤井信一郎さんを偲ぶ

 松田聖子、薬師丸ひろ子、原田知世らが主演するアイドル映画で多くのヒットを放った映画監督の澤井信一郎さん。3日、83歳で死去した職人監督の足跡を映画評論家、小張アキコ氏がしのんだ。

 

 1938年、静岡県に生まれた澤井さんは、東京外国語大学を卒業すると東映に入社。81年に松田聖子主演の『野菊の墓』で監督に昇進するまで、長い助監督時代には同郷の先輩、鈴木則文監督の『トラック野郎』シリーズ第1作『御意見無用』(75年)などで脚本も手がけた。

 東映で澤井さんの1年先輩の脚本家、掛札昌裕氏は「鈴木さんと澤井さんが書いた『トラック野郎』は本当に人情味あふれるものでした」と10作続いたヒットシリーズを振り返る。

 不惑を過ぎて初監督した『野菊の墓』では、松田聖子に伊藤左千夫が描く薄幸のヒロイン民子を演じさせ、年老いた政夫(島田正吾)がお遍路先で手を合わせるという新人らしからぬ渋い演出も見せた。この映画に出演した沢竜二の芝居を本多劇場で演出したこともあった。

 84年に監督した人気アイドル薬師丸ひろ子主演の『Wの悲劇』のロケ現場を訪ねたときのことだ。夏の終わりの代官山界隈だった。世良公則にエネルギッシュに芝居をつける小柄な澤井さんの姿に旬の映画監督のオーラを見た気がした

 『Wの悲劇』は大ヒットし、日本アカデミー賞で東映育ちの三田佳子に最優秀助演女優賞をもたらしたばかりか、自身も最優秀監督賞に輝いた。

 最後に監督したのは、2007年の反町隆史主演の『蒼き狼 地果て海尽きるまで』だった。

 公開中の『ロボット修理人のAi(愛)』の監督、田中じゅうこう氏は4年ほど前、80年代アイドル映画特集のトークショーへの参加を澤井さんに電話で依頼したが、「家から外へ1人では出れないんだよ」と言われ、実現しなかった。実際にはこの頃すでに車いす生活を余儀なくされていたらしい。

 過密スケジュールのうえ、演技も未熟なアイドルを主演にヒット映画を作り続ける、そんなアルチザン監督の死は本当に寂しいことである。 (小張アキコ)

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